インドネシア政府が生活保護給付(CCT)を継続する理由

貧困と生活保護給付。インドネシアには世界最大の条件付き現金給付プログラム(CCT)がある。複雑な要件を設定し、貧困認定された場合は給付を受けられ、その見返りに子供を就学させるなど条件を継続的に満たさなければならない。

年間予算は社会保障・その他補助金への税投入の10%ほど。他の社会保障制度への投入は、国保への20%が最大で、年金やその他の社会保険への税投入はない。

生活保護は制度としては必要だが、投入している予算規模と、その使い道をそろそろ見直す時期に来ている。国の経済と人口動態を見たとき、中間層が膨れ上がり、少子高齢化へ待ったなしの状況は明白である一方、年金制度の未整備は危機的状況。

日本の国民年金のように、税投入なしでは、自営・個人事業主への年金制度拡充もうまく行かない。

私たちは政策対話の中で税投入を年金制度へ増やすべきと提言している。すると、「税源が限られていて、追加措置はむずかしい」と言われる。「政府は数年後に貧困率をゼロにすると言っているが、貧困層がいなくなっても生活保護を今の規模で維持する論理は何か」と返答。「生活水準も上がってくるので、貧困線を上げなければならないときが来る」と言われる。なるほど。貧困層がいなくなれば、貧困層を増やすために貧困の定義を変えることで、予算とプログラム維持される。

社会保障への税投入は政治と省庁間の権力闘争が付きまとう。内外から騒いだところで変わらないし、論理的な議論や、エビデンスも意味はない。政治経済、政策実現というものは、そういうものだ。ただ、インドネシアはそろそろ皆年金を始めなければいけない。