日本で進まずインドネシアで進むデジタル化-個人情報と法令順守意識の違い
マイナンバーカードの個人情報漏洩問題で行政指導が入ったデジタル庁。デジタル庁が民間のスピード感や民間登用を取り入れてきたことが継続されると良いなと思う。
従来官僚機構の感覚では、テストにテスト、会議に会議、判子に判子、長い年月をかけて何事も実施する。それには理由がある。経験上、新しいことを実施する官僚機構の職員の仕事の9割以上は守りの仕事となる。
つまり、問題が絶対起きないようにし、問題が起きたときの言い訳、対処法も詰める。長い期間をかけて議論と文書作成する。この過程で、「絶対大丈夫なのか?」「絶対は約束できないです」となると、「止めておこう」となることも多い。
とりあえずやってみて、失敗したら改善修正しながら質を高めていく、という大手IT企業の手法は使えない。スピード感をもってやろうとすると、従来の工程を飛ばすことになる。
失敗が顕在化すると、守りの作業は更に増える。調査が始まり、内部・外部への説明資料作成、説明場所の設定、再発防止策の策定、すべての書類の決裁。守りの作業が9割から10割近くに達し、新しいことを始めにくくなる。
民間登用の方は、守りの作業をしながら使命感や忍耐力を低収入で維持し、残ってくれるだろうか。経験上、公的機関の仕事が遅いのは、世間の目が厳しいため。
世間が「ああ、そんなこと木気しなくて良い、個人情報なんてアメリカのサーバーにあって、どうせ漏れてるんだから」という人ばかりなら、守りの作業は極端に減る。
これがインドネシアでデジタル化が進む理由。極端な話、法令違反でもお咎めなしだったり、世間も批判しなかったり、後付で実態に則した法令ができたり。
日本の官僚機構だと、守りの作業には優秀な人材が配置される。優秀な人材は長時間の守りの作業に疲弊し、「自分の能力をいかして前向きな仕事をしたい」と考えるようになる。そして、優秀な人は転職していく。
こういう悪循環がデジタル庁では始まらないと良いな、と思う。今が正念場なので、応援したい。