インドネシア人の気質と管理職に求められること
インドネシアで仕事をするときに念頭に置いているのはインドネシア人の気質。私は毎月のように労働者・経営者・官僚と公開討論のようなことをやっている。その中で、インドネシア人の気質や性格を理解した上で話さなければ、心に刺さらないことも良く理解した。
最も特徴的なインドネシア人の気質は、承認欲求・自己顕示欲が極めて強いこと。大勢がいる中で叱責することは論外として、部署や班といった身内の中で失敗の再発を防止するための改善策を議論することも嫌う。自分の尊厳が傷つけられていると感じる極めてナイーブな気質を持つ。
顕著な事例としては、良い知らせは黙っていても耳に入るが、悪い知らせは手に負えなくなるまで耳に入ってこない。報連相が根付いていないインドネシアでは、自分の成功を最優先に報告し、失敗やリスクは上司や関係者に黙っていることが多い。自分に権限があるかどうか関わらず、失敗やリスクを内密に帳消しにする方法を模索する傾向にあるため、上司や取引先の知らないところで権限・契約に反する形で行動していることもある。そもそも権限・契約・規程を遵守する意識はほとんどない。そのため、上司・取引先は知らないところで何が起きているのか常に注視する必要があり、マイクロマネジメントが不可欠になる。
裏返せば、マイクロマネジメントする人が優秀な管理職とみなされている感覚もある。部下や取引先が期日通りに仕事をしているかを常に管理する。約束を忘れていることが極めて多いため、部下や取引先へのリマインドが日々の仕事になる。
解決策は、マイクロマネジメントに秀でたインドネシア人を管理職に置くことだと感じる。しかし、これができる人材がインドネシアには極めて少ないうえ、超高給でトップ企業で働いていることが多いため、一般の中小企業には手が届かない。
日本にはこの手の人材は山ほどいて、超高給でもない。こういう気質の違いを作るのは教育なのだろうと日々感じる。期日を守らなくとも、仕事をしなくても、責められず、成功したときだけ褒められる社会。どちらが幸せかは正直わからない。
注釈。私のサンプルには大企業はない。労働者、経営者、官僚のいずれも、日本企業が直接投資しているような超優良な市場で生きている人々ではなく、ジャカルタの中流階級がサンプルだと考えている。