駐在国の人と歴史認識を対等に語ること

毎年8月を東南アジアで迎えると、独立記念日の熱気に触れる。この地域で働いている日本人としては、大東亜戦争前後の歴史を勉強し続けなければならないと思っている。

日本人が間違ってもやってはいけないのは、現地の人の歴史認識を鵜呑みにすること。尊重しつつも、戦後その国でどのように歴史を教えてきたのか把握する必要がある。これは現地の教科書や、博物館で勉強できる。

私はインドネシア各地の歴史・軍事博物館は時間の許す限り訪れるようにしているが、その多くでは、オランダや日本を並列に捉え、インドネシア人が独立を勇敢に勝ち取ったことだけが主に伝えられている。

たとえば、以下の史実を総合的に知っているインドネシア人はほとんどいない。

日本が国軍の母体を作ったこと。再占領を試みた国連軍の命令で武器供与が禁じられていたところへインドネシア部隊が攻め入り日本軍と戦闘になって死傷者が出たこと。国連軍の命令に反して独立派へ武器の供与を行った部隊があったこと。敗戦前に独立準備委員会を立ち上げ現在の憲法理念が作成されたこと。帰国せずに独立戦争を共に戦った日本人がいたこと。国連軍が再占領をする余地を与えず、独立宣言文が敗戦直後の8月16日に日本大使館駐在武官の公邸でスカルノらによって起草され、翌日発表されたこと。独立宣言文の日付に皇紀が使われていること。

各地の歴史資料館の展示を隈無く読めば、少しずつ記載はあるが、義務教育の教養レベルでは日本もオランダも同等に悪い奴らだったという薄い内容のようだ。少なくとも教育水準の高い同僚とはなしていても、私が学んだ歴史を伝えると驚かれることが多い。

ナショナリズムの高揚が近年のインドネシアの方針となっているからこそ、当事者であった私たち日本人は歴史をしっかり学び、憶せず史実が間違って認識されている部分については反論していくことが大切であると感じる。