開発途上国の支援活動へ募金・寄付する際の心構え

募金にはいくつかの心構えがあるような気がします。それは単純なことで、お互いを知ったうえで募金を集め、募金をすることです。募金をすることで満足していませんか?寄付した団体に過度な期待をしていませんか?募金をする側とされる側がお互いに一歩ずつ歩み寄ることで、より良い国際協力の循環が生まれるような気がします。

国際協力と募金

私が初めて開発途上国の支援活動に関わったのは2006年。香川県の小さなNGO団体でのボランティア活動がきっかけでした。それから約10年が経過し、日本国内でも開発途上国への関心が高まりつつあると感じます。ただ、「関心はあってもなかなか行動を起こせない」そういった声を、私の身の回りでもしばしば耳にします。

私は幸いなことに開発援助を仕事としています。しかし、ほとんどの方々は普段は別の仕事をしていたり、家庭の日常的な忙しさから、国際協力へ足を踏み出せないというのが現状だと思います。そういった意味で、募金は気軽に国際協力へ参加できる第一歩なのかもしれません。

寄付する側とされる側のミスマッチ

昨今のクラウドファンディングの発達もあり、日本にも寄付文化が広まりつつあるような気がします。こうした新しい動きがどんどん広まっていることはとても喜ばしいことです。

一方、寄付する側の期待と、実態の間にミスマッチが起こることも時折見られます。せっかく開発途上国の支援活動へ貢献しようとした方も、寄付した後に「期待していた活動ではなかった」となってしまっては残念です。また、寄付を受け取って活動を行う団体としても、「活動を計画していないことまで期待ても・・・」となってしまっては、お互い不幸です。

ミスマッチの解決方法はただ一つしかありません。お互いを事前によく知ることです。活動計画を十分に説明したうえで寄付を集めること。寄付する前に活動計画をよく理解すること。これが大切なことだと思います。

ここでは、募金・寄付を通じて開発途上国を支援する際に、誤解が生じやすい点を簡単にまとめてみました。開発途上国への支援を仕事としてきた経験から、少しでも役に立てればと思います。

緊急援助、復興支援の違い

緊急援助は、災害発生後の短期間(数日から数週間)で行われる救命活動と理解しています。例えば、日本政府が派遣する国際緊急援助隊(JDR)がよい例です。一般的に被災後72時間を経過すると被災者の生存率が著しく低下するとされます。そのため、日本政府とJICAは被災国政府からの要請(外交ルート)があれば、24時間~48時間で国際緊急援助隊を派遣できる体制を365日欠かさず整えています。

一方、復興支援は、中長期的(数週間から数年)に行われる活動をイメージするのがよいと思います。倒壊した学校・医療施設や道路などのインフラ整備から、保健や教育などの基礎的なサービスの立て直しまで、幅広い支援が長期にわたって続きます。

一般的に、災害などの緊急性の高い援助のほうが募金は集まりやすい傾向があると聞きます。しかし、一旦救命活動がひと段落つくと、今度は復興活動が始まります。復興活動は長期にわたって行われることが多い一方、緊急支援と比べると世間の関心も低く、資金も集まりにくいようです。

募金・寄付金の使われ方への期待

私の個人的な考えですが、まずは緊急援助へ募金するのか、復興支援に募金するのか、を決めた上で募金先を選ぶのがよい気がします。

「寄付金をすぐに被災者へ届けてほしい」

募金・寄付をする際に、私たちはこうした期待を持ってしまうことがあります。自分が募金した1,000円が、一刻も早く、家屋の倒壊した被災者の手へ渡ることが、自分の感情に近いからです。

もちろん、災害給付金として被災者へ直接分配されることや、食糧や生活必需品として分配されることもあるかもしれません。しかし、支援団体によっては、こうした緊急援助ではなく、中長期的な復興支援に力を入れている団体もあります。

個人的な印象ですが、ヨーロッパやアメリカの団体は、伝統的に人道支援に強く、こうした緊急援助を得意とする傾向にあります。その一方で、日本の団体は、腰を据えた支援活動に強い傾向があり、荒れ果てた生活環境をじっくり立て直すことに主眼を置いている団体も多いように思います。こうしたことから、日本の支援団体を通じて途上国支援を検討する場合、募金する側も腰を据えて、長い目で応援することが大切なのかもしれません。

また、寄付金全額が支援に回ることは、あまりありません。そのお金を使って支援する人の人件費、保険、交通費、物資調達、通信費、その他の事業運営費。一つのプロジェクトを実施するためには、様々な形で予算が配分されていきます。

冷静に考えれば当たり前かもしれませんが、国際協力=慈善事業というイメージが強いあまり、こうした事業運営にかかるコストが忘れられられてしまいがちな感じます。

国際協力を募金を通じて行うために

募金をする側は、募金先の支援団体の活動をよく理解することが大切だと思います。また、募金を集める側も、どういった活動を計画していて、どういった用途でお金を使うのかを明確にすることが大切だと思います。そうすることで、期待した通りの活動が生まれ、より良い国際協力の循環が生まれていくのだと思います。

Author: The Povertistの編集長。アジアやアフリカでの開発援助業務に従事する貧困問題のスペシャリスト。貧困分析や社会政策を専門とし、書籍・論文も執筆。

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