インドネシア版「ハローワーク」の成り立ち
労働市場センターは労働省の部局で、事務次官直轄の組織。雇用サービス業務を担ってきた部局(BINAPENTA)とは別の部局として、雇用保険制度の実施と合わせて2021年に設立された。雇用保険制度の成立以前に、労働省や関係省庁と組織体制や実務を喧々諤々、何度も話し合いを重ねた。その中で、インドネシア版「ハローワーク」は「日本のハローワークをモデルにする」という話は比較的早い段階から関係者間では共通理解となっていた。
カナダ人専門家のジョン・カーターと組織体制や実務について報告書を執筆していた2020年8月頃には、すでに日本モデルを前提にインドネシア政府へ技術支援していた。私たちの提言は遅ればせながら昨年末に公開した。
ここからがうろ覚えなのだが、「真相は闇の中だけれど、労働市場センターが事務次官直轄組織として新設されたのは、お前がアンワル事務次官に提言したからだと思う」と同僚に言われた。こういうのを寝耳に水というのだろうか。
事務次官に面会したことは一回くらいしかない。コロナ渦だったのでZoomで何度かパネルディスカッションをしたかもしれない。その中で、「労働省の既存組織では別々の部局が、社会保障、雇用サービス、技能研修を所轄しているが、日本モデルを採用するのであれば、これらの機能を一つの部局が管轄しなければならない。その役割を担えるのは、局長より上の幹部が旗を振ることです。」という話を私は各所でしていた。
それを聞いていたのかどうかは知る由もないが、事務次官が別組織を立ち上げ、人事・予算・計画など、ここまで作り上げてきている。ユスフさんを見ていると、まさに適材適所。上に立つものは、ビジョンと人を見る目がなければならない。そのよい例を垣間見た気がした。