新しい挑戦と新しい技術
毎年何か新しいことに挑戦することは大切だ。それによってできなかったことができるようになり、できることが増えれば、複利的にできることが増えていく。
2023年10月、埃がかぶっていた一眼レフを引っ張り出してきて、ジャカルタの街歩きをはじめ、「これはおもしろい」と思い、バカ高いミラーレスカメラに買い替えた。きっかけは、仕事で政策対話を実施する際に、広報用の素材を作るためにカメラマンへ業務委託していたことだ。カメラマンからあがってくる写真を見ているうちに、タンスの奥にあった一眼レフカメラを思い出したのである。仕事で付き合いのあるカメラマン(リスキ)に「どこでカメラを買うべきか」聞いてみたとき、異口同音に「フォーカスヌサンタラ」と言った。タナ・アバン地区にある比較的小さなカメラ屋だったが、そこで一念発起して人生で最も高価な買い物をした。
おもしろいのが、そこでの出会いだ。フォーカスヌサンタラに偶然訪れていた地元の若者(ヴィエリ)が話しかけてきて、「面倒くさいな」と思いながらもインスタグラムを交換したりした。彼は仕事の傍ら動画コンテンツを作っていて、フリーランスで副業をはじめたいようだった。2024年末にようやく再開することとなり、それ以来、週末になると声を掛けてくれて、カメラをもって市場へ出かけている。
撮った写真はインスタへあげることで、地元のカメラマンと交流できるようになった。今年のはじめにShutterTripというグループが運営するカメラマンのストリートフォトグラフィの集まりに誘ってもらい、地元のアマチュアカメラマンとの交流も最近では増えてきた。そして、インスタへ綺麗な写真をあげている人の話を聞くにつれ、自分がやっているのは「撮って出し」という未編集の写真を掲載していることで、他の人はライトルームなどのアプリを使ってRawファイルへ編集を加えていると知った。ライトルームなどを使った高度な編集を覚えるのが面倒だったので、EvotoというAI編集アプリを使うようになった。これもいずれは自分でやりたいがために、ライトルームなどのアプリへ課金するようになるのではなかろうか。
もう一つ新しくはじめたことと言えば、昨年の今頃、健康増進の一環でパーソナルトレーナーを付けてジムへ通いはじめ、インドネシアの不健康な出前に頼り切った食生活から自炊生活へ舵を切った。健康年齢を伸ばすことを意識する年齢である。
また、新しい挑戦と言えるかわからないが、YouTubeで動画配信もはじめた。動画配信と一言で言っても、一人何役もこなさなければならない。何を話すか考える企画、演者、撮影、録音、編集、投稿と、一連の制作過程には多くの工程と技術が詰まっている。自分で話し、自分で編集し、視聴者の反応を見ていると、自分は表に出てウケるタイプではないとつくづく感じる。昔、母が言った「お前の良さは、長く付き合ってないと理解してもらえないよ」と言う言葉が最近よくわかる。
YouTubeで映像作品を作るようになってから、カメラを持って街歩きする趣味と掛け算できないか考えはじめた。そこで行き着いたのが、胸にアクションカメラをつけて街を歩くことだった。思い立ったら吉日、フォーカスヌサンタラへ向かい、アクションカメラ(DJI Action 4)を買った。一人称視点で撮る作品をPOVと呼ぶらしい。TABINCIのブランドで細々と運営していたYouTubeチャンネルへ、ほぼ未編集の散歩動画をあげるようになった。最初こそ記録作品のようで満足していたが、途中から飽きてきた。そこで、地元の人々と話すシーンのみを切り取って字幕を加えるハイライト作品を作るようになった。これがまた難しく、何より言葉がわからない中で、音声解析、文字起こし、翻訳、SRTファイルへの変換をAIを使いながらやらなければならない。
たいした技術もないが、手探りで編集をはじめ、YouTube動画で勉強しながら編集作業をした。編集ソフトもはじめはMicrosoft ClipChampを無料で使っていたが、すぐに課金へ移行し、それでも飽き足らずAdobe Premiere PROへ課金することとなった。いずれにせよ、ある程度の機材や編集手法は身についたので、あとは企画の質を上げることで、作品を見てもらえる機会を増やす必要がある。今はその段階まで来たような気がする。
日常的に関心のあることや趣味として行っていることを、追加の労力なしにコンテンツ化するメカニズムを常に探ってきた。そうして出来上がった作品が写真であり、動画であり、ブログの記事だったりする。
ブログの記事に関しては、AIの文字起こし・編集能力が著しく向上したことによって高い生産性を確保している。カメラに向かって話し、それをNottaで文字起こしをして、Claude AIでブログ記事にする。こうすることで、音声・映像コンテンツがYouTubeにあがり、ブログにテキストベースのコンテンツがあがる。
最近はじめたことで言えば、Spotifyへポッドキャストを投稿するようになった。仕事の振り返りをカメラに向かって話し、それをYouTubeチャンネルへ動画コンテンツとして投稿するサイクルを作ったが、動画データの容量が大きいのが悩みだった。保管するためのコストもかかるし、アップロードの時間もかかる。そこで調べてみたところ、Spotifyへ音声データをあげると、YouTubeへRSSフィードで動画としてアップロードされる機能があるとのことだった。これまでは、音声データを作り、それにサムネイルを加えて動画を作り、YouTubeへアップロードしていた。それが、Spotifyへ音声データをあげるだけで、YouTubeへ投稿が完了するようになる。すばらしい時短だ(唯一の問題はSpotifyへ予約投稿すると、YouTube側で過去動画として認識されて非公開設定で投稿されてしまうことだ)。
ここまで書いてみて、ここ二年程で、随分とコンテンツ制作の能力があがったと思う。少なくともまんべんなく、ビギナークラスには到達している。そして、作成したコンテンツは可能な限りIFTTTで媒体を連結し、自動的に複数のソーシャルメディアへ投稿される設定としている。数年前までは、手動で複数のソーシャルメディアへ投稿していたものが、今では、一か所に投稿することで複数の媒体への投稿が完了する。素晴らしい時代だ。
新しい技術が次から次へと登場している。AIが一気にこれまでできなかったことを容易にできるようにし、新しいAIがほぼ毎週登場する。これからも色々な技術が登場し、できることの幅が広がっていくのだろう。技術は一度遅れると追いつくことが難しくなる。必死で食らいつこうと興味の向く限りトライしてみる。その姿勢が大切だと思う。
コンテンツ制作に関しては、ILOの業務以外の場面で色々な作品制作に挑戦しているが、仕事へも応用できるものもある。実際、映像作成に必要な工数、プロセス、アプリ、ファイルなど、自分でやってみなければわからないことも、今ではよくわかる。仕事で発注するときも、プロの話す言葉がわかるのは大切なことだ。