ペンギンからの警告:気候変動と南極の氷

おもしろいやり取りがある。「南極って大陸なんだよ」と言った僕に「そんなのウソだろ。でっかい氷の塊に決まってるだろ」と答えた友人がいた。意外にも彼と同 じ反応をする人は多い。では、これを聞くともっと驚くのではないだろうか。「南極には世界最大級の砂漠があるんだぜ」ほうら、驚いた。実はこれも事実。気 温が低いために水蒸気が発生しない南極では、ほとんど雨が降らないことに起因するとかしないとか。

「地球温暖化」という言葉が耳を塞いでいても聞こえてくるようになり、少しずつ環境問題が身近になってきた。テレビでは連日、氷河が崩れる瞬間やホッキョ クグマが溺れる映像が流されている。だけれど、遠い場所で起きていることなど、実際にはあまり心に響かないのも事実。スピルバーグの社会派映画を見た後の ように、その衝撃はその瞬間だけのもので、僕らの生活にそれ程影響を与えるには至っていない。この記事のはじめに書いた友人とのやり取りも同じで、遠い島 国に住む僕らは南極で起こっていることなどあまり気にも留めていない。

そういうわけで今日は南極のペンギンのお話です。まず下の写真を見て下さい。

ここで感想を聞いたら「ペンギン可愛い!」「キレイな写真!」という答えが90%以上を占めるのではないでしょうか。僕も最初はそういう感想を持ちまし た。しかし、どうでしょう。この写真をじっくり見るとペンギンたちが立っている場所は氷の上のようです。種明かしをすると、実はこれは「南極の氷が急激に 溶けていること」を警告した記事の一部です。

英語では”Golobal Warming(地球温暖化)”と “Climate Change(気候変動)”という言葉が最近よく新聞などで使われています。「不都合な真実」でノーベル賞を取ったアル・ゴアさんを批判して、「地球温暖 化はウソだ」と反論する人がいるようですが、「気候が年々変わってきている」ということに反論する人はあまりいないのではないかと思います。そういう意味 で「気候変動」という言葉の方が個人的には好きです。

ペ ンギンの話の続きを少ししましょう。ペンギンの赤ちゃんを一度は見たことがあると思います。茶色のモコモコの毛で覆われた人形のように見えます。実は、こ のように南極に生息するペンギンが小太りの体型であるのには訳があり、氷点下の極寒で生き延びるためにはそれだけの寒さに耐えられる脂肪と羽毛が必要とな るのです。ところが、それ程防寒対策を完璧に行っている子ペンギンたちがここ数年でたくさん死んでいるとの事です。さて、想像が付くでしょうか。急激な気 候変動により、日中の気温が15度を超えることもあるそうで、脱ぐことの出来ない防寒着によって次々とペンギンたちは死んでいるのです。

気候の変化を研究する科学者たちが最も注意深く観測しているのが、この南極。そこで観測史上最大の気候変動が今起こっています。遠い場所で起こっていることとしてどこかで目を瞑ってしまっている私たち。「単に可愛かった」ペンギンを違った角度から見てみては?