近況報告とこれから

昨年秋ごろからあまり時間が取れず、The Povertistやこちらのページへの投稿が滞っています。まず、キャリア相談や寄稿を含め、メールやコメント欄などでたくさんのご連絡をありがとうございます。しかし、ご連絡いただいている皆さんに半年以上全くお返事が出来ておらず、申し訳ない思いでいます。これらをいつ再開できるか目処が立たないので、こちらで少しだけこの間の状況を報告だけさせて頂ければと思います。殴り書き、走り書きになってしまいますが、お読み捨ていただければ幸いです。

2020年1月まで、国際労働機関(ILO)アジア太平洋地域総局(バンコク)で変わらず仕事をしていました。具体的には日本の厚生労働省からの任意拠出金による2つのプロジェクト(ESSANIRF)のマネージャーという形で、ベトナムの社会保険・年金制度改革、東南アジアのインフォーマル経済への社会保障拡充政策、インドネシアの雇用保険制度設計の3本柱の技術協力を展開していました。

主な成果について、ベトナムでは国民皆年金へ向けた制度改革が現在進行していますが、政府方針にかなり多くのプロジェクトの貢献が採用されています。インドネシアでは雇用保険制度設計へ向けた初期の基礎調査や政労使との対話・研修をプロジェクトを通じて実施しました。ASEANの地域政策への打ち込みという点では、インフォーマル経済へ社会保険を拡充するためのボトルネックの分析報告書やASEAN10カ国の代表を集めた三者協議の実施など、一定の成果があったと思います。

ILOの技術協力というと、調査・研究・対話・研修です。公開していない成果もありますが、いくつか列挙すると以下のようなものです。

ちなみに、ILOプロジェクトが刊行物を出版する場合、校正、デザイン、印刷もすべてプロジェクト単位で契約から出版まで担うため、研究の実施に匹敵するほどの労力がかかります。限られた予算で出版するとなるとローカルのデザイナーと契約することが多いのですが、英文に不慣れな場合も多いため、デザインは良くてもWORDからInDesignへのコピペの家庭で英語の文節・文脈が崩壊することも多々あり、なかなか大変です。特に最初にあげた2つは研究期間1年に対し、出版作業に半年以上を要し、チーム全体で本当によく最後までやってくれたと感謝しています。

今年2月からインドネシアに拠点を移し、ファーストリテイリング社からの拠出による事業を展開しています。雇用保険制度の導入や失業者に対する雇用サービスの拡充に関する技術協力事業です。2月に政府が国会へ提出した法案には既に、制度導入へ向けた条項が含まれており、日本の支援事業下で実施してきた下準備が実現へ向けて動き出した形です。これから制度設計と実施へ向けた調査研究・提言・対話を実施していくことになります。

プロジェクトは私を含め5名の常勤スタッフと数十名の内部・外部の短期専門家を合わせた比較的大きな所帯です。

この間、幸か不幸か、インドネシアでは新型コロナウイルスによる休業・不況の到来で雇用保険の重要性が再認識されるにいたっています。100万人を超える失業者は休業を含めると今後もさらに増えていくと予想される一方、日本のような失業給付制度はなく、企業からの退職金のみが失業時の手当てとなっています。

インドネシアには世界最大の条件付現金給付(CCT)プログラム(PKH)という事業があり、生活保護部分の社会保障はある程度充実している一方、国民の多くが対象となる公的制度はこれから導入・拡充していかなければならない段階です。

今回の景気後退局面においても、失業・休業が横行する一方、失業給付も休業時の賃金助成制度もありません。ILOは伝統的に貸付や現金給付を実施する機関ではないので、こうした緊急対応局面に機動的に動くことは難しい一方、緊急対応へ政府の制度設計へ助言することは可能です。

プロジェクトでは、失業給付の制度設計を引き続き支援しているほか、ドイツ・韓国・日本の雇用調整助成金のような恒久的な仕組みの検討についても、細かな制度設計を提示するなど、日常的に政労使のパートナーへ助言・対話を続けています。新型コロナの失業・社会保障に与える影響の調査も実施しています。

プロジェクトのページで情報は随時公開していくので、ご関心があればアクセスしてみてください。ILO本体のページは公式リリースが掲載されている一方、社会保障局が管理するWorkspaceではワークショップのプレゼン資料・写真などのISBN番号をとらないようなナレッジプロダクトも随時公開しています。

以上、乱雑になりましたが、近況報告にかえさせて頂きます。