インドネシアは成長優先で格差是正は捨てている

この記事はインドネシアに関心ある方は面白いと思います。私もほぼ同じ見方をしています。この国は成長優先で格差是正は捨てています。

社会保障に関して補足するなら、こういうことだと思います。貧困層への生活保護は世帯数・予算は最大規模で、政府はここを強化すると言っています。これは格差対策に「取組んだ感を出す」巧妙な方策と捉えています。社会保障のカバレッジは貧困層と高所得層に限定されていて、ボリュームが大きい中間層のカバレッジが極めて低いです。この現象をMissing middleと言ったりします。中間層が政府のサポートを受けるには貧困に陥るか大企業に就職するかが条件となります。貧困の予防を担う社会保障がありません。格差是正のためには中間層をカバーしなければなりません。

たとえば、年金改革も何かやった感を出すために、高所得者層向けの公的制度のみ改革する方向で法案が通過しました。大中企業以外は厚生年金への加入義務はなく、国民年金が存在しない中、ほとんどの人々は無年金で老後を迎えます。企業責任として退職金支給が義務化されていますが、大企業以外はコンプライアンスが極めて低く、労使紛争でもっとも多い事案の一つです。ただ、労組側も法定退職金制度は2003年に勝ち取ったレガシーだと考えているので、退職金制度と引き換えに国民皆年金目指す交渉には消極的です。囚人のジレンマのような状況です。

産休育休手当も未だ社会保険化されておらず、企業責任による支給となっており、大企業社員以外はコンプライアンスが低いです。女性の社会進出が進まない理由の一つです。病欠休暇手当も企業責任です。

社会保障の課題は、こういう感じです。中間層をカバーする皆年金制度がない。老齢、障害、遺族年金ないので、働けなくなったり、障害を負ったり、配偶者が亡くなると、貧困リスクがたかまりますが、貧困になるまで社会保障は得られません。

退職金・産休育休・病欠手当を企業責任とすることで、無支給による非難の矛先は政府ではなく企業へ向いています。産休育休・病欠で給与無支給を受け入れざるを得なかったり、辞職を要請されたり、中間層が貧困に陥るリスクは大きいです。また、企業責任が大きすぎるので、ベトナムに工場移転が続いています。

社会保障以外では、アウトソース・期限付き雇用の適用緩和、零細企業の最低賃金適用免除など、ビジネス優先の改革が進んでいます。

また、中間層は賃金が低すぎると感じており、サラリーマンを辞めていつか起業したいとみんな思っています。そのため、サラリーマン向けの制度充実には無関心で、起業家支援や自営業支援を歓迎する傾向にあります。とはいえ、多くの人が失敗するので、国の行く末を案じています。

この人口規模で無年金・無貯蓄老人が溢れかえった国はなく、いっぽう、インドネシアは数十年後このままで確実にそうなります。また、今は経済は内需主導で良いですが、私はバブルがいつか弾ける気がします。ジャカルタ市民は150万円の新車に300万円のローンを平気で組み、Grabタクシーのドライバーとして非正規仕事で返済しています。高級なスマホや家電もローンで買っています。そして、株式市場の上位は銀行です。賃金水準からは考えられない消費感覚で、年金や貯蓄は二の次で子供世話になろうとしています。

小さな政府を目指す国において、私の仕事や交渉は困難を極めていますが、もう少し掻き回す予定です。

ちゃん社長 on Twitter: “今後は米国経済がリセッションに入り、中国の内需も落ち込みます。その中で日本が関係強化に努めるべきは東南アジアです。特にインドネシアは最重要国です。2.7億人というASEAN最大の人口を有し、資源国でもあるインドネシアは今後どれだけ経済成長を遂げるでしょうか。今日はその考察を書きます(1/5) / Twitter”

今後は米国経済がリセッションに入り、中国の内需も落ち込みます。その中で日本が関係強化に努めるべきは東南アジアです。特にインドネシアは最重要国です。2.7億人というASEAN最大の人口を有し、資源国でもあるインドネシアは今後どれだけ経済成長を遂げるでしょうか。今日はその考察を書きます(1/5)