イノベーションは国際協力を盲目にするのではないか

「イノベーション(技術革新)」という言葉が国際協力業界をにぎわしている。

規制の少ない開発途上国では先進国以上にイノベーションを導入しやすい背景もあり、特にICT分野が盛り上がっている。

かくいう私も、自分の分野である社会保障とイノベーションの関係についていくつか記事を書いたりもしていて、関心分野である。

イノベーションというと、これまでになかったものが新たに生まれることを示す。それゆえ、人は目をキラキラ輝かせて新しいものの誕生を今か今かと待ちわびるわけである。

この好奇心こそがイノベーションを盛り上げ、南北格差のゲームチェンジャー(一発で解決する魔法の一手)として期待させるのである。

ただ、最近はふと我に返って冷静に考えることもある。

イノベーションは素晴らしいが、他の大切な議論から注目を削いでしまう危険性はないだろうか。

どんなに素晴らしい試みも、単体で全てを改善することなど到底できやしない。

冷静に考えれば、フィンテックで大注目のケニアのモバイルバンキングM-PESAでさえ、いったいどの程度貧困削減に直結しているかわからないし、どの程度経済成長に貢献しているのかも分からない。

もちろん、ないよりはましだろうが、他の伝統的な地道な能力強化研修やコミュニティレベルの生計向上プロジェクトだって引き続き意味のある活動なのだろう。