JICAとILOの仕事文化の違いと、欧州サッカーと日本代表の違い

JICAで働いていたときは、業務で分からないことがあれば、まず、マニュアルを探して読むところから始まった。それでも分からなければ、担当部署へ聞く。

どんな些細なことにもマニュアルがあり、各職員が誰かに聞かなくても手続きの手順が分かるようになっていた。それ故、単純な事務的なことであれ、契約関連の手続きであれ、担当部署に聞かずとも、担当部署が作成したマニュアルを見れば、新人職員にだって作業を進めることができる体制が整っていた。

それが、ILOではどうだろうか。これは実に興味深い。事務的に分からないことがあれば、まずは担当者に聞く。自分で調べて解決せず、必ず担当者に聞くべし。これが正解である。実際にはケースバイケースなのだろうが、新人研修で教えられる標準的な回答は、担当者に聞け、である。

この違いはきわめて大きい。JICAのような場合、日々の手続きや技術的な知見は部署や組織に蓄積される。だから、人事異動が頻繁にあっても、マニュアルが残り、作業は滞りなく、システマティックに行われる。

一方、ILOのような場合、事務的なことや手続きの手順についての知見は人に蓄積される。もちろん、分厚い基本的な文書はあるものの、日常業務の知見については個人。引継書もマニュアルもないため、その人がいなくなったら組織としては大打撃なのだろう。

この違いは欧州サッカーリーグを見ると良く分かる。ヨーロッパ勢は、自力でドリブル突破したり、個人で局面の打開を図ることが多い。個人力がものをいうわけだ。

一方、日本代表のサッカーはどうだろうか。パス回しが中心で組織力で局面を打開するパターンが多い。調和や組織力が日本の強みである。

サッカーの本田選手が次のようなことを言っていた。

日本人は生まれながらに組織力がある。

つまり、組織戦術をいつまでも練習していても仕方がない。もっと個人力を磨けば、もとからある世界一の組織力に加えて両刃の無敵艦隊ができる。

そういう意図だったと思う。