ジャカルタ地下鉄から見るインドネシアの内向き志向

ジャカルタ地下鉄はJICAの支援で完成して数年がたった。完成直後に日本大使館前から乗ったときは人も少なかったが今は同僚も通勤に使うほど普及している。

それ以来使っていなかったが、数年ぶりに利用を試みる。観光も兼ねて。開業当時は台湾地下鉄方式で、切符のかわりにトークンを買って、降車時の改札にトークンが吸い込まれる形式だった。

今回利用を試みたところ、トークンは廃止されていて、パスモのようなカードを買ってトップアップする方式に変わっていた。35000ルピアの支払いで、10000ルピアのバランス。ロンドン地下鉄のようにデポジットを返却する仕組みはなく、返却時にはデポジット分の25000ルピアは客側の損失となり、バランスだけが返還される。一区間のみの販売はモバイルアプリのみで提供されている。モバイルアプリの登録にはプレイストアかアップルストアからインストールすればよいわけだが、プレイストアの場合、グーグルアカウントの住所をインドネシアに変更し直す必要がある。アップルストアの場合はインストールがスムーズな様子。第一関門をクリアしてインストールしたとしても、支払いのために別のアプリと連動させる必要がある。グラブ、ゴジェック、OVOなどの登録には住所が必要で、登録申請から数日を要することもある。

これらを考慮すると、ジャカルタ地下鉄は一見さんお断りとなった印象が強い。短期滞在の観光客、一度だけ乗りたい人や出張者には、一連の登録手続きが煩雑すぎるか間に合わない可能性が高く、掛け捨てのデポジットを払ってまでカードを手に入れたい人も少ないだろう。

かくいう私も、ここに書いた一連の説明を受けたあと、その場を立ち去り、地上でGRABを拾った。インドネシアの各種サービスを見ていて共通しているのは、ターゲットがインドネシア人であることと、その中でも一部の人に限定される方向にいくこと。高度なモバイル化や区間ごとの販売省略は良い例で、外国人、観光客、高齢者、アプリ、Eマネーを使わない人、一見さんなどは排除される。

バス好きの子供を持つ同僚も最近同じような経験をしていて、バスに乗るにもバス会社のアプリが必要。子供はスマホも持っていないし、最近到着したばかりの外国人親も各社のアプリをまだ入れていない。便利なものがあるのに、使えないということはこれからも増えるのだろうな、ジャカルタ。