日本以上に忖度社会のインドネシアに住む

インドネシアに駐在する人は異口同音に「インドネシア人は人がよく、暮らしやすい」と言う。たしかに、快適に暮らせる社会の仕組みや、助けてくれる人が多かったり、極めて快適に住ませてもらっている。

しかし、最近は本当にそうなのかと疑っている。私はおそらく駐在員の中でも最も多くの人と対話する機会に恵まれている。政労使の中央幹部から地方幹部、地方の地場産業の民間社員、若者、老人。その中で感じることは、目上の人に対する強烈な「遠慮」を駐在員は「謙虚で親切」と捉えていないか。

インドネシア社会では年下が年上に、部下が上司に意見することは極めて稀。目上の人が喜ぶことは伝えるが、問題が発生すると取り返しがつかなくなるまで抱え込む。社会全体が日本以上の忖度で回っている。

同じことは日常生活にも現れる。たとえば、門番や受付や運転手は、外国人や年上や偉そうな人に対してはかなり下手に接する。「友達が偉くなった途端に連絡無視するようになった」という話もインドネシア人からよく聞く。

社会全体が、「誰が上で、誰が下なのか」の判断基準を暗黙の了解で共有し、瞬時に判断して忖度して振る舞うことで成立している印象を受ける。この暗黙知を知る由もない外国人は、忖度を親切と受け取っていないか。