インドネシアに産休制度を作るしごと

産休・育休と休暇中の所得保障についての国際基準の歴史は長い。制度設計に関する技術的な提言や議論への参加を仕事にしていて感じるのは、制度の前提や価値観が昔と相当変わってきているということ。

日本の場合、産休手当は健康保険料、育休手当は雇用保険料が財源になっている。他国の例でも、どの制度と組み合わせて保険料を徴収するかは異なるものの、保険料を財源としているところが多い。

インドネシアは産休・育休制度はいずれも社会保険は存在せず、使用主負担となっている。社会保険化について政策議論・提言を続けている。

政府幹部と話をしていて問答が繰り返される中、「なぜ、50代の私が保険料を払わなければならないのか。」という質問を受けた。制度活用の可能性が低い国民をどのように説得するか、といった視点での質問。

「保険料は年代問わず支払うことで世代間で支え合い、若い時に制度を活用することで受益する」というのが教科書どおりの回答となる。

こうした議論をしながらふと立ち止まって考えることがある。現在、生涯にわたって子供を持たない人が増えている。未婚、同性婚、婚姻関係があっても結果的に子供のいない夫婦。夫婦や家族の在り方が多様化する中、制度の国際基準は変わっていない。

養子の育児に関しても制度適用する例はある。ただ、生涯通じて子供を持たない(と決めている人)・持てない人に強制加入させた上で保険料を徴収することに対する合理的な説明は難しい。

もちろん、制度を充実させることで出生率を上げるなど、国や社会が達成したい目標へのツールとはなるかもしれない。ただ、そうした国民から説明を求められた際に合理的な説明をすることは、制度設計上難しいのかもしれない。

存在しない制度を紹介し、制度を作っていく過程で説明を考え、喧々諤々議論する。そんなことをやっていると、昔と今の社会や価値観の差と直面することがある。