NHKから国民を守る党の戦略から目が離せない
NHKから国民を守る党の政治戦略を見ていると、発信力の神髄を見ているような気がしてきます。たった1議席を新人議員が獲得し、1カ月がたちました。しかし、党首をメディアで見ない日はないし、政府が閣議決定で同党の公約について政府見解を示すほど影響力を持っています。
私はテレビの無い生活を15年以上しています。立花党首はポッと出と思われがちですが、私にとっては随分長いこと見てきた方の一人です。登録者が数千人の頃から見ていると思います。ユーチューバーとして活動している時期は長く、地方議会で議席を取るなど、着実に実績を上げてきた印象を私は持っています。
彼のユーチューブを見始めたきっかけを覚えていないのですが、身近な問題を法律で詰めていくショーとして見ていました。法学部生のバイブル漫画「ナニワ金融道(青木雄二著)」をリアルタイムで見ている感覚に近いです。
たとえば、レオパレス裁判。私も大学在学中は家具付きアパートに住んでいたため、身近なトピックです。放送法64条では「NHKを受信することのできる受信設備を設置した者が契約しなければならない」としています。テレビを設置したのはレオパレスですから、「部屋を借りた人にはNHKと契約する義務がない」というのが原告(N国が支援)の主張だったと記憶しています。結局、最高裁判所は「部屋を借りた人に契約義務がある」と判断しましたが、第一審では原告が勝訴し、法廷の場でも判断が揺れました。
また、放送法64条では上記の通り契約義務に関する規定はありますが、支払い義務に関する規定はありません。それ故、NHKから国民を守る党の立花党首は、「義務なので契約はするが、義務ではないので支払いはしない」と主張しています。これを根拠に当選直後のインタビューで「議員会館の受信料を踏み倒す」と言っただけで、「国会議員払わないなら…大阪市も払わない」と松井市長が言及するなど、反響が広まりました。これを受けて、NHKは反対声明を出して注意喚起するとともに、政府は閣議決定で「受信契約を結んだ人は、受信料を支払う義務がある」という政府見解を示すに至っています。
私は法学部一年生の夏に様々な法解釈を勉強する中で、「そもそも解釈が必要な曖昧な法律を改定しないで放置していることが問題なのではないか」と常々疑問を持っていました。法律の素人が直感的に思ったことです。裁判を何十件も戦ってきた立花党首は、「法律が曖昧だから争いが起きる」と悟り国政を目指したそうです。とてもシンプルで大衆に響く理由がわかる気がします。
NHKから国民を守る党の公約は、NHKのスクランブル化一本で、その他の議題については直接民主制で投票方針を決めるというもので、NHK改革を達成した暁には解党・党首引退を明言しています。ワンイシュー政党であるが故、その他の政策で立場が異なるであろう有力政治家を次々と仲間に加えています。問題発言等で孤立している議員を仲間に加えることに対して批判もあります。私は基本的に、法律で辞職しなければならない事案以外で責任を取って辞職する世の中の風潮には反対なので、こうした動きを全く問題視していません。
NHKから国民を守る党を批判している方の多くは、政見放送やユーチューブ動画を全く見たことがないか、ハイライトしか見たことのない人かと思います。マスメディアでの振る舞いの裏に隠された戦略の全てがYou Tubeチャンネルで語られているので、ぜひ見てみるとよいと思います。その際、メンタリストDaiGoさんのチャンネルと合わせて見るとよいでしょう。お二人は面識も支持関係もありませんが、DaiGoさんが立花党首の戦略を日々心理学的に分析し、立花党首もDaiGoさんの分析や提案を真摯に受け止めているように見えます。例えば、DaiGoさんが昨日のユーチューブ投稿で行った提案を、立花党首は本日実行しています。このライブ感も、熱狂を生む要因のようです。
NHKのスクランブル化以外は直接民主制を採用するという公約ですが、どのように実現するのかが気になっていました。DaiGoさんの提案を採用した立花党首はユーチューブの投票機能を使い、早速、様々なトピックについて投票を開始しています。学者や統計学を勉強した方はおそらく、「サンプルバイアスが・・・」などと批判するのでしょうが、投票システムが完成するまでは「無いよりはマシ」なのでインターネット投票への貴重な第一歩と感じています。一応補足しておくと、内閣支持率に関する投票結果を見てみると、立花さんのユーチューブ上の投票結果は支持率43%、時事通信が行った調査結果は47%と大差ありません。そもそも、マスメディアが実施する世論調査の手法が正しいのかもよくわかりませんから、上記のような批判に然程意味はなさそうです。
私はテレビの無い生活を続けているし、日本に住んでいないので、NHKの受信料を支払った記憶がほぼありません。そのため、NHKから国民を守る党の政策が良いか悪いかの価値判断や、支持する・しないといった意見も特にありません。ただ、新人議員が世の中の流れを動かしていく業は、とても勉強になると感じています。
NHKの番組についていえば、プロフェッショナル仕事の流儀や歴史ドキュメンタリーなど、料金を払ってでも見たい作り込まれた番組が多くあると感じます。そういった番組は、お金を払うので海外からでも購入したい。一方、こうした番組に公共性は感じないため切り離し、日本たばこ産業やNTTのように株式上場すれば良いのではないだろうか、とは思います。公共性を担保するだけなら、24時間ニュースや教育番組だけ流すチャンネルだけあればよいわけです。
ここまで長々と書いてきましたが、そろそろ筆をおこうと思います。海外駐在が長い私も、NHKのドキュメンタリー番組はスポット購入したいことは多々あります。スクランブル化なり分社化なりが実現し、海外でも見たい人は見れるように、見たくない人は払わなくてよいようになると良いかなとは思います。