国際協力を仕事にすると家庭との両立が難しい理由
配偶者控除額の引き上げが国会で議論になっています。
「配偶者控除額を引き上げることによって、稼げる配偶者にはもっと稼いでもらおう」という方向性については、ダブルインカム世帯が増えつつある時代に即していて歓迎されるべきだと思います。配偶者の多くは、女性です。間接的に女性の社会進出を後押しするといった国の戦略に即した議論なのでしょう。
海外駐在員の配偶者の制約(JICA職員、国連職員編)
では、国際協力業界はどうでしょうか。
日本大使館、JICA、国連職員として海外で働く場合、家庭を築く上で色々な制約があります。
最も大きな問題は配偶者の在留許可の問題です。
JICA職員の駐在先に配偶者がついていく場合、ほとんどの場合、配偶者は専業主婦(夫)となります。
これはなぜでしょうか。
配偶者は配偶者向けの査証(VISA)を取得することになり、私が知る限り労働許可が認められるVISAは発給されません。
そのため、配偶者が駐在先について行って一緒に住みたい場合、前職を退職して専業主婦(夫)になるか、自力で駐在先の国で労働許可証を取得する必要があります。
JICA職員の赴任先のほとんどは開発途上国ですから、ハードルが高いと思います。現地法人への就職など、可能性がゼロではありませんが、労働許可証の取得を支援してくれる現地法人を見つけるのは簡単ではないでしょう。先進国駐在の場合はもしかしたらもっと大変かもしれませんね。
そういうわけで、JICA職員の配偶者として海外駐在先へついていくには、多くの場合、前職は辞めなければならないというのが実態だと思います。
私の知っている職員は、単身赴任か専業主婦として同伴している人がほぼ100%です。稀に、同業の方と結婚して、同じ駐在先でJICAや国連の仕事を見つけて共働きをしているレアケースに出会います。これはあくまで例外ですね。
国連職員の場合も基本的に同じようです。
ILOの場合、スイス本部に駐在する場合は、配偶者にも労働許可が下りるようです。ヨーロッパ出身の職員が多く、みんな共働きでキャリア志向が強い者同士が結婚することが多いためか、スイスだけ例外扱いになっているようです。ほかの国へ駐在する場合は、ILOでも配偶者は働くことができないようです。
JICAの場合は日本古来の文化的な影響もあってか、女性が仕事を辞めて専業主婦として駐在先についていくパターンが多い気がします。一方、国連の場合は、共働きが多く、単身赴任もかなりいるような印象です。当然、危険地への赴任が多い国連機関に勤めている場合は、駐在先に家族を同伴できないパターンが多いので、単身赴任も増えます。
このような理由でJICAは国連ほどひどくありませんが、現実問題として、国際協力業界でキャリアを歩む私たちが、配偶者も含め、キャリアと安定した家庭を築くことを両立するのは、極めて難しい時代に入っているのかもしれません。