国際協力キャリア一問一答

私が質疑応答に答えていくキャリア相談ページ「国際協力キャリアフォーラム」。個別の相談があれば是非フォーラムにトピックを立てていただければ幸いです。なるべく迅速に丁寧にお返ししようと心がけています。もちろん仮名でも構いません。

今回は最近いただいたご相談内容についてです。多くの方にも参考になりそうだったのでここシェアさせていただければと思います。社会保障関連のキャリア構築に関する質問で、私は以下のように答えました。

キャリアの方向性と年齢のリミットはなかなか悩ましいですよね。キャリアは十人十色だと思うので、完璧な答えはありません。あくまで一つのアイデアとしてお読みいただければ幸いです。

社会保障・子どもの権利に関するキャリアの可能性は?

社会保障と子供という組み合わせであれば、UNICEFに社会政策(Social Policy)のポストがあります。子供に対する社会保障をメインに扱うポストが多いようで、ご専攻と近いのかと思いました。また、本部であればより高い専門性と分析能力が求められる一方、開発途上国にある現地オフィスではマネジメント能力がより求められると聞いたことがあります。民間でのプロジェクトマネジメントの経験をいかしながら国際機関の現地オフィスで活躍するというのも選択肢かもしれませんね。

民間や青年海外協力隊での経験の売り込み方は?

民間、青年海外協力隊のキーワードが有利に働きそうなのは、JICAの企画調査員やジュニア専門家のポストです。詳しくはJICAホームページやPARTNERをご覧いただきたいと思いますが、競争率は国際機関より圧倒的に低く、エントリーレベルとしては良いのではないでしょうか。ご専門に近い分野の企画調査員ポストがあれば、報酬も比較的良いです。また、JICAは官民連携(PPP)も推進していますので、民間での業務経験は評価されると思います。JICA案件を受注しているコンサルタント会社も選択肢かもしれませんね。

企画調査員の選考過程での足切のポイントは?

個別の採用に関しては一つの答えは無いと思います。ただ、JICAの企画調査員のポストに関して言えば、要件で機械的に足切を行うことは少ないかと思います。たしかに、一つのポストに対して何百・何千件もの応募がある国際機関であれば、要件で機械的に足切をしているようです。しかし、実質的に日本人限定の公募であって、ある程度の職歴が求められ、開発途上国での勤務を前提とした30~40代向けのポストである企画調査員については、応募数はかなり少ないはずです。一般的に応募数が少なければ1つの書類に掛けられる時間が増えるため、書類内容での勝負になります。要件で尻込みせず、とりあえず応募してみるのが良いと思います。

企画調査員の応募要件の考え方は?

企画調査員の応募要件に「専門家格付け4号(大卒後9年以上)とあった」とのことですが、おそらくそれは報酬に関する格付けを参照されているのかと察します。PARTNERに掲載されている個別の企画調査員のポストをご覧頂くと、必ずしも「大卒後9年」といった最低要件を課していないはずです。つまり、公募はあくまで個別ポストの公募内容に基づいて行われ、一旦採用が決まれば格付け「4号(大卒後9年以上)」の待遇(給与テーブル)となるということ。上記のとおり、職務年数が足りない方でも倍率が低ければ可能性は大いにあると思いますので、あまり気にする必要は無いのではないかと思っています。

※ 専門家の号と大卒年数の関係 (PARTNER

 特号  30年以上
 1号-1  26年以上
 1号-2  22年以上
 2号-1  18年以上
 2号-2  15年以上
 3号  12年以上
 4号  9年以上

学問と業務の関係

これは仕事によると思うので回答が難しいですね。たとえば、国際労働機関(ILO)は国際機関の中でも専門機関と呼ばれる部類に入り、私の職場は社会保障政策を担当する部署です。日々の仕事と言えば、修士課程・博士課程の延長に近いのかもしれません。文献をネットで探し、政策文書を作成し、出版する。こういう仕事がメインであれば、「書く力」が求められ、必然的に学術的な経歴を持っている方が重宝される印象を持ちます。一方、技術協力プロジェクトに携わる人にとっては、総合的なマネジメント能力が求められるため、実務に精通した人が活躍できると思います。

英語を伸ばすには?

私自身も常に悩みの種です。国際機関の公募ポストへ直接応募する場合は英語の点数は聞かれません。ただ、JICAやJPOではたしかに点数を聞かれますね。JICAとJPOのポストを比較すると、JPOの応募者の方が英語の点数が高いという感覚を持っています(帰国子女や日本語のたどたどしい人も多いほど)。私の経験上、アウトプット型の人とインプット型の人がいて、私は前者でした。アウトプット型は英語を使って伸ばす人で、インプット型は座学で伸びる試験勉強に強いタイプです。これに関しては助言できませんが、いろいろ試行錯誤してみてください。

※バンコクの国際機関でご活躍中の亀山翔大さんのブログに国際機関でのキャリアについて詳細に書かれていますのでご参考まで。