JICA職員と国連職員の途上国ライフの違い、治安リスク

先日、「海外駐在で「エンタメない」説は本当か?」というトピックを取り上げたところ、いろいろな反響がありましたので少し掘り下げてみたいと思います。まだ読まれていない方は、この記事の前に是非読んでみて下さい。

個人的な仮説としては、治安リスクを取る人はエンタメへのアクセスがより多くあり、治安リスクに敏感な人は保守的に見の周りで楽しむ傾向にあるのではないかと思っています。そして、国連職員の方が私生活で治安リスクをとりやすく、JICA職員は治安に敏感になる立場上の要因が強く働く気がします。

最近色々な知人と話をしていて気づいたのですが、「エンタメない説」を唱えているのはJICA駐在員の知人が多いかもしれません。一方、「エンタメある説」を唱えるのはJICA以外の援助関係者が多い気がします。

国連職員はクラブへ行き、JICA駐在員は個人宅でカラオケ?

国連職員の知人の中には、夜間に外国人が集まるクラブやバーへ行って、遅くまで飲んで帰ってくるという人も少なからずいるようです。一方、JICA駐在員の知人で、そういう人はあまり聞いたことがありません。むしろ、日本人の個人宅でカラオケや飲み会をしている印象です。国連職員は外国人コミュニティ(主に白人社会)にいて、JICA職員は日本人コミュニティで途上国ライフを送っている印象ですね。

これは実はとても興味深い傾向です。立場の違いや治安・安全意識の違いも大きく関係すると思います。ここでの前提はアフリカで、かつ、戦時中の国ではない国。たとえば、私が2010年に滞在したケニアの首都ナイロビを例にしましょう。今もそうかもしれませんが、当時は一般犯罪の他、テロのリスクが高まっていた時期です。

生活の中で治安への意識をとがらせているのは圧倒的にJICA職員に軍配が上がるような気がします。夜間の外出禁止があったという話をすると国連に勤務する知人は驚いていました。戦時下でもない限り、個人の私生活に職場が介入するというのは国連ではありえないのかもしれません。

JICA職員は監督する立場

JICA職員の場合、関係者を監督する立場にあるので、治安への意識を高く持っている必要があります。たとえば、外務省が海外在留邦人に対する安全情報を出していますよね。ヨーロッパの在留邦人にさえ、先日のイースター休暇の際には主要都市の「人込みは避ける」など、テロに遭遇しないための行動規範がメールで届きました。

これがJICA駐在員の場合、外務省基準(場合によってはより厳しい安全基準)で安全対策を考えて、関係者にお達しを出す立場になるわけです。アフリカの駐在員コミュニティではJICA関係者は圧倒的多数ですから、たとえば、「夜間の門限を守っていない職員がいる」という噂はすぐに広まります。安全管理を担当する側が安全意識に欠ける行動をとると示しがつかなくなるわけです。プライベートの時間まで気分的には拘束されている感じになりますが、それも職務のうちということで順守する人がほとんどだと思います。

また、テロの脅威がある場合は、「西側資本・権益の商業施設やホテルに近づかないように」と、在留邦人向けに大使館からメールが届くことがあります(先日のイースター休暇の際も似たようなメールが来ましたね)。国連職員は西側権益に囲まれた生活圏で居住・勤務することが多いので、これへの対処をすることが難しいという事情もありますが、普段行くスーパーマーケットが西側権益かどうかを意識している人はあまりいないのではないでしょうか。私がJICA職員として出張・滞在していたときは、権益を把握していてかなり強く意識していたように記憶します。

立場の違いが「エンタメあり説」に影響する

ここまで書きましたが、どこまで治安を意識するかは、当然個人差があります。少なくとも私は極めて保守的に行動するタイプです。JICA時代に経験した途上国滞在で、徒歩で外出できる国を担当したことが無いため、滞在・出張先では「途上国では外を歩かない」という生活スタイルが刷り込まれました。その影響もあってか、自宅にずっといても、ある程度楽しく過ごすことができるようになったわけです。途上国、先進国問わず、夜間外出はもちろん、日中でも人込みは避ける生活スタイルになっています。

まとめると、安全管理する側であるというのが、JICA職員の治安意識に影響を与えているような気がします。また、西側コミュニティにいるかどうかというとも、途上国ライフが異なる要因のようですね。