アリとキリギリス

昔々あるところに、たいそう勤勉なアリとキリギリスがいたそうな。アリは貧しい家庭の育ちである一方、キリギリスは村でも3本の指に入る大金持ちの家に育ったそうじゃ。アリの家はいつもキリギリスの家から食べ物やお金を借りたりしていたんじゃ。そんな貧しい環境の中でもアリの両親は毎日汗水流して働き、ようやくアリを学校へ通わすことができたわけじゃ。ところが、そんなアリにキリギリスはこう言ったんじゃ。

「なんでそんなに小さな字で書いてるんだよ。もっと大きく書いたほうが見やすいしきれいだろ?」

アリは穏やかにこう答えたんじゃ。「これで十分読めるし、あんまり大きく書くとノートがもったいないよ。」そう、アリは自分の両親が汗水流して買ってくれた、たった1冊のノートを大事に使っていたんじゃよ。

「っけ。そんなに小さく書かなくったって、ノートなんて家にたくさんあるんだ。うちの会社は文房具作ってるんだぜ。なくなったらかえばいいじゃんか。」キリギリスも最後までこう言い通してその場は終わったんじゃ。

そして5年後。わしはアリに聞いたんじゃよ。「キリギリスはどうした?」って。彼はこう答えた。「お父さんの会社が倒産しちゃったんだってさ。なんでも、村にあった木を全部使っちゃって、ノートを作れなくなったみたいだよ。」