デジタル化に置いていかれるな
ここ数年でデジタル技術が仕事環境を大きく変化させた。それに対応できていない人との差がストレスを感じるレベルまで開いていると実感することも増えた。
たとえば、仕事上のビザ申請で旅行会社を通じて顔写真データを送付する場合、旅行会社は外務省へデータを送付し、問題があれば外務省から旅行会社へ押し返す。最近あったのは、背景が薄い青色だったのを白色のものに差し替えるように旅行会社に外務省から指示があった。旅行会社は私に別の写真の提供を依頼した。私は別の写真は持ち合わせていなかったので、「写真 背景 変更」でググって、写真の背景だけをワンクリックで変更してくれるウェブサイトを活用。元の写真の背景を白色にして1分後に旅行会社へ送り返した。
昔は撮り直しに行ったり、Adobe Photoshopでやっていた作業だが、今ではたいてい誰かがサービスを無料提供しているので、ググれば解決する。
言いたいことは、今回の場合、旅行会社は顧客に写真の差し替えを依頼して煩わせるのではなく、ググって勝手に背景を白くして再提出すればよい。外務省は旅行会社に押し返すのではなく、勝手に白色にすればよい。
私が使った方法を数秒で思い付き、実行することができる人とできない人の差が、3人のバケツリレーの往復という無駄な時間に繋がった。こういう小さいことが、日常の仕事の中で毎分発生している。私もデジタルに遅れまいと必死だが、一度置いていかれると挽回が難しい。
もう一つ。デジタルというほどの話ではないが、日本で働いていたとき、私はワードとエクセルを普通に使えると自負していた。ILO本部で文書作成をする機会が増えてから、自分はワードのワの字も使いこなせていなかったと自覚した。
見出し、行間調整、目次、文献一覧、校閲、文書結合などなど、何一つ知らなかった。使いこなしていた上司から学び今がある。ただ、私の周りにはこれらを使いこなす人はまだ少ない。綺麗な文書を短時間で作成するためには不可欠な機能なので、これらを使いこなせていない人と共同作業するときは、相当時間を取られる。結果、将来的に一緒に仕事を依頼するのをためらう場合もある。
エクセルも同じで、予算計画を作成する際に非常にわかりにくい構成で表を作成してくる人がいる。一番多いのは列や行ごとに数式をひとつずつマニュアル入力しているパターンで、同じ列で異なる数式が入っている場合。
こういう表を受け取ると、決裁権者は確認作業にとても時間を掛けなければならない。数式がすべて正しいか、全てのセルを一つずつ確認しなければならないからだ。ワードの件と同様に、エクセルで明瞭な表を作成できない人との仕事は時間と労力を浪費するため、仕事を依頼するのをためらう。
この手の話はたくさんあって、これからも差が開いていくと感じる。私たちにできることは、効率的に学ぼうとせず、ある程度時間をコミットして新しい技術に慣れる努力を惜しまないことなのかもしれない。