仮想通貨と開発政策を真面目に考えるときがきた

長々ととりとめのない話が続くので、結論からお話しする。開発政策を議論する我々も、「仮想通貨と開発」について本気で取り組み始めた方が良いのではなかろうか。

公共財政管理、マクロ経済、金融政策を勉強している知人は多い。しかし、どれほどの人が仮想通貨を真剣に捉えているのだろうか。法定通貨のみ見てきた人類の歴史が今、変わるかもしれない岐路に私たちは立っている自覚はあるか。

ブロックチェーン技術の話は、日々刻々と変わっていて、浮き沈みが激しい。しかし、非中央集権型の通貨が必要とされる状況は既に開発途上国で認識されつつある。たとえば、ジンバブエのように自国通貨に信用の無い国では、法定通貨から仮想通貨などに逃避する状況が確認されている。

開発政策を学ぶ知人には是非、「The impact of cryptocurrency on public finance management in fragile states」とか「Cryptocurrency and development」で修士論文を書いてもらいたい。仮に仮想通貨が市民権を拡大していけば、公共財政管理に与える影響は避けられない。コントロールできない通貨が流通したとき、財政基盤の弱い途上国政府はどういう行動をとるべきか。その影響は何か。影響は計り知れない。

  • ビットコイン、国家不信に沸く ジンバブエで1万ドル超

    インターネット上の仮想通貨ビットコインは日本時間9日、欧米の取引所で1ビットコイン=8000ドル(約90万円)近くまで上昇し、最高値を更新した。バブルを危惧する声もあるが、世界を見渡せばまだまだ大したことはない。アフリカ南部、ジンバブエではとっくに1万ドルを超えている。南米ベネズエラでは取引が年初の100倍に膨らんでいる。(2017/11/10 9:59日本経済新聞 電子版)

本家と分家の内戦の果てに

ここ数か月の間、仮想通貨とブロックチェーンについて勉強している。また、授業料を市場に投じてみてはじめてわかることもあるので、自分もプレーヤーとして参加している。仮想通貨と言っても、ビットコインからはじまり、イーサリアム、モナコイン・・・と、数えればきりがないほどの通貨が次々と発行されている。

市場からの資金調達の方法も、時代とともに変わってきた。株式市場ではIPOブームが2000年代に起こり、2010年代初頭にはクラウドファンディングが登場した。2020年代には仮想通貨の発行による資金調達(ICO)の時代も予感させる。それほど仮想通貨の勢いはすさまじいものがある。

たしかに現状では、上げ下げに一喜一憂する投機的な要素が強い。この週末の動きを見れば気が狂いそうな程激しい上げ下げだ。本家ビットコインは一夜にして40%の暴落。分家したビットコインキャッシュは一夜にして400%の暴騰後、30分で100%の暴落。

本家と分家の覇権争いだ。ビットコインキャッシュを推進する人たちが仕掛けたもの。技術的な部分は非常に難解だが、ビットコインはセキュリティに優れているが送金手数料が高い問題があり、ビットコインキャッシュはセキュリティが甘くなる一方、送金に適した通貨という理解。

一方、ビットコインの先物が上場されるという話もある。インフォーマルな通貨だったビットコインがフォーマルになる日も近い(デジタルゴールドになる可能性もあるけど)。もちろん、JPモルガンやクレディスイスなど、伝統的に金融市場を牛耳ってきたプレーヤーからは冷や水が浴びせられている。

本来、仮想通貨市場にいる人たちは、内戦をやっている場合ではなく、倒すべき敵は伝統的な金融市場なのにな。そんなことを考えながら、非中央集権型の新しい通貨の動向を眺める日々である。