ジュネーブ国連職員の週末

キャリアセミナーやスタディツアーで大学生や若い方からよく聞かれることがある。「週末何やってるんですか?」と。国連職員、国際協力のキャリアを歩んでいる人は週末何やっているのだろう。セミナーや講義で話をする機会が多い私たちは、かっこいい仕事のことばかり話すものだから、「ホントのところどうなのよ」というリアルな日常の部分に皆さん関心があるようだ。これからキャリアを目指す若い皆さんにとって、私たちはどこか雲の上の存在に見える様子。ある意味、「アイドルはウンチをしない」みたいなレベルで、私たちの日常のリアリティを想像しにくいようだ。

たしかに、「私の週末」というタイトルで講義依頼を受けることはないし、国際機関キャリアセミナーなどへ出ても、日常生活に関する質問はしにくいのだろう。講義をする側としても、国連で働く醍醐味やロマンを全面に出して、魅力を伝えることを求められる。したがって、日常の庶民的な話をほとんどさせてもらう機会はない。

そこで今回は私が一肌脱ぎたい。ドン引きされることは覚悟の上で、私の一般的な週末をご紹介する。

洗濯

私の土曜日は洗濯から始まる。一週間に一度の洗濯の日。はじめに言っておくと、洗濯機を3回まわすのがこの日の日課。洗濯・脱水は各30分で、乾燥は一回当たり4時間を要する。「洗濯・乾燥機を夜間にまわすと近隣住民が嫌がるので止めてほしい」のだそうで、日中にやる必要がある。そうなると週末の日中しかないわけだ。真偽は不明だが、「隣人の物音がうるさいことで、警察を呼ぶ」という笑い話があるほど、スイス人は神経質らしい。

項目 洗濯・脱水 乾燥
仕事用のシャツ 30分 自然乾燥
下着・靴下 30分 4時間
バスタオル・キッチンタオル 30分 4時間+自然乾燥

1回目は仕事用のシャツ。しわを残さないように脱水を弱めにする必要があるため、他の洗濯ものと分けて選択する。脱水が終わったら、自然乾燥させるために、風呂場のハンガーにかけておく。

2回目は下着・靴下。乾燥機を使うことができる素材のものはここで纏めて洗う。これが終わると乾燥機をまわす。全自動ではないため、脱水まで終わると乾燥機の設定を行い、マニュアルでスタートさせる。

3回目はバスタオル・キッチンタオル。2回目の4時間の乾燥が終わったあと、洗濯・脱水からスタートする。日本の洗濯機程洗練されていないため、かさばるタオル類は脱水が全くできない。洗濯が終わった後、手で絞り、乾燥機へ入れる。

これらの作業はマニュアルで操作しなければならないため、一日付きっ切りの作業工程となる。ちなみに、誤作動があるのと、乾燥機が発火したら嫌なので、外出する際は乾燥機を止める必要がある。

買い出し

ジュネーブのスーパーマーケットは、週日の営業は19時閉店。土曜日は18時閉店。日曜日は終日閉店。つまり、仕事をしている私たちにとっては、土曜日が唯一の買い出しの日となる。私の場合は、土曜の午後に、バックパッカー用のバックパック(50リットル)を背負って、スーパーマーケットへ向かう。スーパーマーケットではサミットバックが貰えないため、バックを持参する必要があるためだ。このバックパックに野菜や肉を満載すれば一人暮らしの一週間はだいたい乗り切れる。6千円くらいの出費だ。

スーパーマーケットはありがたいことに、徒歩往復30分くらいの近場にある。5キロ分の食材を背負って往復するにはちょうど良い距離。坂道もあるため、良い運動にもなる。

ちなみに、ここ3か月はアパートのエレベーターが故障しているため、5階まで徒歩で上り下りしている。これがなかなかきつい。10階に住んでいる人にとっては、本格的な足腰強化月間ということになる。

掃除

リビングとベッドルームが1つずつあるだけの一人住まい。掃除は然程大変ではないが、一週間に一度は掃き掃除をする。掃除機が無いので、モップ掛けで済ませる。そして数ヶ月に一度は拭き掃除。一休さんの要領で雑巾がけをやると、汗だくになって良い運動にもなる。

特にキッチン回りの拭き掃除は、油はねもあるため入念に週一回は行う必要がある。外食中心の生活でキッチンをほとんど使わない人はこの限りではないが、私の場合(そしておそらくジュネーブ駐在員のほとんどの場合)は365日中350日くらいが自炊。それなりにキッチンも汚れるわけだ。

IHなので食器用洗剤を伸ばし、お湯を注ぐと汚れが浮いてくる。それを布巾でふき取る単純な作業。水回りを綺麗にしておくと、料理をするモチベーションにもなるので掃除は入念に。

夕食

ここまでの工程をこなすと夕方になる。この日の夕食は白菜の水炊き。午前中に昆布を水につけておいて、昆布だしが出来上がっている。その中に白菜と豚肉を敷き詰め、もやしやネギなど、その日のスーパーマーケットで手に入った葉物野菜を入れる(スーパーマーケットで売っている食材は季節によって異なる)。

つけダレは、先ほどの昆布だしに醤油と砂糖を加え(日本酒があれば少々)、ライムを絞ってポン酢を作る。単純な水炊きだが、野菜を採るには簡単にできるのでおすすめ。食べ終わった後は、ごはんをいれて、卵を落とし、雑炊でしめる。

晩酌

また、キッチンで料理をしながらお酒を飲むのは幸せなひと時である。ここ2ヶ月くらい外食も晩酌もほとんどなく、お酒をほとんど飲まない生活をしていたが、この日だけ解禁。イタリア産サラミを食べながら、ジュネーブ産スパークリングワインを飲む(写真)。食後は映画を見ながらフランスワインをのんびりと。

この日の映画は、「深夜食堂」。Amazonビデオは本当に便利なのでおすすめ。いろいろな人生の交差点に深夜食堂があり、そこで交わされるマスターとの日常の会話を聞いているとお酒がすすむ。

ちなみに、週日は基本的に社食でランチをとるが、野菜はほとんど入っていない。野菜が欲しければメインのほかにサイドメニューに別料金を払う必要がある。2皿分の会計は2千円をこえてしまうので、私は野菜は付けない。そのため自炊だけが野菜を採れる、貴重な栄養源となる。

日曜日

最後に日曜日の過ごし方。日曜のジュネーブは町全体が休みとなる。市街地へ行くと、車はもちろん、人っ子一人いない。誇張ではなく町一番の繁華街ですら、一軒もお店は開いておらず、誰も歩いていない。日曜日は家族と過ごすのが一般的であるため、誰も外出しないのだろう。

私はときどき、郊外へ電車の一人旅へ出かけるが、私の周りの同僚は皆、やはり自宅にいるようだ。外出しても何もない上に、電車へ乗るとすぐ1万円の出費になるのが嫌らしい。

そういうわけで、私も十中八九自宅にいる。朝起きて、ヨーグルトを食べて、コーヒーを淹れる。仕事をしたり、本を読んだり、ネットをしたり。今日は二日酔いの頭を叩きながら(晩酌で二日酔いはなんともみっともない)、土曜日に終わらなかった家事・洗濯の続きをやっている。

また、一週間の自炊へ向けた仕込みも日曜日の大切な日課だ。今日はこれからひじきと昆布の総菜を作る。丸鶏を買ってきて、鶏ガラスープを作り、一週間ラーメンや鍋の出汁とすることもしばしば。

振り返り

ジュネーブに駐在する若者は、多かれ少なかれこんな生活をしているのではないかと想像する。同僚の独身若者たちと週末の話をしても、土曜は買い出しと仕事、日曜は家事と仕事をしながらサッカーを見てたという人が多い。ジュネーブ駐在員の週末はだいたいこんな感じというわけだ。

なるほど。改めて自分の生活を振り返ってみると、どうりで家事の効率や、料理の腕があがるわけだ。妙に納得した日曜の午後である。