グッドナイト、ハノイ

10年ぶりのハノイ。電灯の切れかけた入管は今はもう無い。日本国旗が印字された真新しい空港が変わりに出迎えてくれる。

旧ベトナム軍のヘルメットを被ったタクシードライバーはもういない。金色と灰色のツートンカラーの髪型の若者が運転する。車内にはDVDが流れ、胸元の開いた女性DJが艶かしく奏でるクラブミュージック。

10年前と変わらぬ車内での40分。2009年5月。あの日は晴れだった。どこまでもまっすぐ続くだだっ広い幹線道路は今も同じ。変わったのは僕だけか。ロンリープラネットの文字を頼りにゲストハウスを予約していたあの頃を思い出しながら、アゴダで小奇麗なホテルを予約する。

ハノイの街はそれほど変わらない。変わらぬ人波と喧騒。ワシントンDCとジュネーブで4年暮らしていると路上ですれ違う人はあまりいない。ハノイにいると一日で一年分の人とすれ違う。ここでは今も昔も時計の進むスピードが速い。

東南アジアの湿っぽい空気。ひんやりと静まり返る路上。早起きに備える朝食屋さん。

戻ってきた。アジア。