インドネシア政府と年金制度改革の質問のやり取り
インドネシア政府から私のチームに年金制度改革の質問が引っ切り無しに届く。先週末にスタッフの携帯に電話があって、3時間話したそうだ。私が参加するときは通訳を雇う必要があるので最低でも前日までには会議設定する必要がある。ただ、急に電話が来て数時間議論ということはよくある。
その中でスタッフが回答に困った質問をいくつか事後に私と問答する。このサイクルが勉強になるし、先方にとっても有益。興味深かった問答は、「インドネシア人は30年も勤続年数がなく、60歳まで勤務したくない人が多いが、年金受給までの期間はどうすべきか?」という質問。
厚生年金の受給開始年齢は58歳で2043年に65歳となるように3年ごとに1歳上昇していく。一方、確定拠出年金は56歳据え置かれている。企業の定年は雇用契約や労働協定で決まるが多くが55-56歳。日本では定年といえば、これらがきっちり揃っているが、インドネシアはバラバラなので上の質問となる。
私たちからは厚生年金と確定拠出年金の給付開始年齢を揃え、65歳まで上げていくことを伝えている。
では「勤続年数が短く、早期退職する人は年金を貰えないと不公平だ」という声にはどう答えるか。日本的に言えば、受給年齢前に退職するの自己責任であって、貯金なり何なりアテがあるはず。ところが、インドネシアでは「できるだけ早く退職して悠々自適に暮らしたいけど、年金も欲しい」という意見が至極全うなものとして公式な場で議論される。恥ずかしげもなく。これに対する回答は、厚生年金の受給資格である15年というのを撤廃するというもの。現行では15年未満の加入期間では、年金は貰えず、一時金の支給となる。この要件を不問とし、1年の加入ごとに1%ずつ上乗せされるようにする。14年勤めれば、一時金ではなく、給与の14%を毎月死ぬまで受け取れるようにする。こうすることで、加入期間の短い人も年金をいくらかは確保できる。それでも足りない人は当然働かなければならないが、「高齢者は仕事を見つけにくいし、身体が老化で弱く働けない人もいる」という質問もくる。これには、求職する場合は失業給付を貰い、職種転換が必要なら職業訓練。
厚生年金の障害年金も受けられるようにする。老化による体力低下で働けない場合は障害年金を厚生年金から給付されるようにする。老齢年金だけでなく、雇用保険や障害年金の制度設計に穴が無いかどうか埋めていく必要があるので。
このような問答が一本の電話から数時間渡ることは日常茶飯事。大きなイベントをほとんど実施しない私の事業展開の8割以上はこの手の問答を電話や会議室で演っている。
想定問答と回答準備のために、日常的に膨大な調査費用と専門家を入れていて、質問がきたら「しめしめ」とタンスの奥から資料を引っ張り出す。この繰り返しで私もチームも成長し、同時に技術協力を実施できる。