ソフトバンクの孫社長から学ぶ、日本の国際協力に必要な要素
モッタイナイ。日本人が持つ共通の価値観であり、日本の国際協力でもしばしば強調されるコンセプトである。最近感じるのは、モッタイナイを再考することが、日本の国際協力を一歩前進させるためには必要なことなのではないかということだ。
先日、ソフトバンクの孫社長がトランプ大統領と面会し、任期期間中に5兆円規模の投資を米国で実施し、5万人の雇用創出を見込むと伝えた。
すばらしい話だ。ただ、よく考えてみてほしい。
孫社長はトランプ氏に面会する必要は無かった。面会して投資の許可をもらったわけでもなく、支援要請をしたわけでもない。
ではなぜ、面会したのか。孫社長が面会した理由は、ただ一つ。
「5兆円の投資と5万人の雇用創出をします」
これをトランプ氏に伝えることだけだった。なぜ、トランプ氏に会って伝えたのか。
目立つためである。トランプタワーにはメディアがいて、トランプ氏と会えば世界中にソフトバンクの名前が響き渡る。
株価は指標の一つに過ぎないが、面会報道が流れた翌日、ソフトバンクとスプリントの株価は上昇した。ビジネスクラスの往復航空券一枚で、自社の価値がとんでもなく上がった。
ここから日本の国際協力が学ぶべきことがある。
孫社長の旅費は「もったいなかった」のだろうか。日本の国際協力業界には、途上国の人々に評価されればそれで良いという信念がある。これは全くもって良い事で、正しい。
一方、国際的に評価されるのであれば、それも悪いことではないが、日本の国際協力業界にはこれを重視しない習慣がある。
案件を実施して途上国にいかに直接利益をもたらすかが重要であって、西洋中心の国際社会に評価される必要は無い。案件を実施したら発信はそのついでに少しやる程度で、何もしなくても誰も文句は言わない。こういう習慣が今なお色濃く残っている。
つまり、事業実施の前後に、国際的にどうアピールするかという視点は、「プラスα」の要素であって、それを実施しないことによる潜在的なメリットを重視していないのが現状だ。
国際協力機構(JICA)の場合、事業に関連した研究活動をJICA研究所が国際的に発信したり、幹部の国際会議で発表する機会を奨励するなど、発進の重要性が認識されつつある。
ただ、日本の国際協力業界には、途上国での事業以外にお金を使うことに対して理解しない人のほうが多い。
何億円規模の事業を実施して、それで終わり。
同じ案件を何倍も大きく見せるアイデアや努力が欠けている。
それが孫社長から日本の国際協力が学ぶべきことだと思う。