イチローさんの会見から思うこと

イチローさんが三千本安打を打った。会見を見ていて、自分の気持ちに近いことを耳にしてはっとした。

 

「人に会いたくない時間もたくさんありましたね。誰にも会いたくない、しゃべりたくない。僕はこれまで自分の感情をなるべく殺してプレーをしてきたつもりなんですけども、なかなかそれもうまく行かず、という苦しい時間でしたね」

結果が出ずに悩む姿を語ったもの。今の自分にも共通しているものがある。仕事を始めてから7年目になったけれど、ずっと貫いてきたことがこれ。プロとして感情を無にし、冷静に分析して結果につなげることに注力すること。結果的に、オフの時間も人に会いたくなかったり、食事も一人ですることが多くなっていった。プロとして苦しい時間は誰にでも共通なのだと感じた。

 

「今まぁ4番目の外野手というポジションなので。もう少し感情を無にしてきたところをなるべく嬉しかったらそれなりの感情、悔しかったら悔しい感情を少しだけ見せられるようになったらいいなというふうに思います」

一つ結果を出したイチローさんは、苦しい時間から開放されたかのように、感情をこれからは出していこう、と思うに至ったようだ。結果を一つ出せば、感情を出せるようになるのか。その瞬間が待ち遠しくて、プロは孤独にプロであり続けるのかもしれない。

 

「これはみなさんもそうですけど、これだけたくさんの経費を使っていただいて、ここまで引っ張ってしまったわけですから、本当に申し訳なく思っていますよ。そりゃもうファンの方たちの中にもたくさんいたでしょうし。そのことから開放された思いの方が……思いのほうがとは言わないですけど、そのこともたいへん大きなことですね。僕の中では。普段そこにあった空気がなんとなく乱れていたっていうのも感じていましたし、明日から平穏な日々が戻ることを望んでいます」

最後の最後で結果を出せずにいた期間が長引いたことに対してのイチローさんの回答。結果を心待ちにしていた全ての人に対する申し訳なさだった。これは自分にも共通するところがある。感情を無にして結果へ向けて盲目的に立ち向かっているけれど結果が出ないとき。自分のことよりも、期待してくれている全ての人に対して申し訳ないと感じる。自分よりも周りへの気遣いのほうが大きくなっていって、自分が二の次になる。このことは、プロとして孤独を極めるだけでなく、出口の無い戦いを戦っているのではないかと言う二重の苦しい時間となることが多い。

 

――16年間、これだけの変化があった中で、その中でこれだけは変えなかったという軸となるものはなんだったのか?

「ある時から、先ほども言いましたけど、感情を殺すことですね。このことはずっと続けてきたつもりです。今日、達成の瞬間もすごくうれしかったんですけど、途中ヒットをがむしゃらに打とうとすることがいけないことなんじゃないかって僕は混乱した時期があったんですよね。そのことを思うと、今日のこの瞬間、当たり前のことなんですけど、いい結果を出そうとすることがみんなも当たり前のように受け入れてくれていることが、こんなことが特別に感じることはおかしいと思うんですけど、僕はそう思いました」

プロとして感情を殺して生きる。僕もこれをずっと実践していて、いつの間にか新しい職場でも新しい生活環境でも感情を前に出せない自分が出来上がっていた。一つ結果を出すことができれば、感情を少しずつ前に出していける自分ができるのか。イチローさんがこれからそうしたいといっているように、僕も一つ結果を出し、その域に達したいと切に思う。