ILOで仕事をはじめて最初の目に見える成果がこれ

2016年4月からILOで仕事をはじめて、日々黙々とネットサーフィンをしながら、政策文書(通称:ポリシーペーパー)という堅苦しい作文をしています。

公私ともどもネットの住人となってしまったわけで、オタク街道まっしぐらでございます。

紙を作ってナンボ。というのが、ILOの特に本部の部署に課せられた使命なわけです。

数ある国連期間の中で、ILOが「専門機関」というカテゴリにある理由がここにあるわけです。

 

しかしながら、目に見える成果を世の中にまだ出せていませんでした。

書き続けた下書きは山のようにあるのですが、色々な大人の事情によって、ネット上にアップロードされるにまだ至っていないのが沢山あるわけです。

その中で、小さな成果が一つ出ましたので、以下にリンクを貼っておきます(誰もクリックしないのは知っていますが)。

まあ、成果と言っても、私が書いたわけではなく、コメントをしただけです。学術業界で言う、査読というやつですね。

Kidd et al. 2017. Exclusion by Design: An Assessment of the Effectiveness of the Proxy Means Test Poverty Targeting Mechanism.

内容については、The Povertistの方で、近々レビューしてみたいと思いますので、是非楽しみにしていてください。

ここでは簡単にイメージをお話しします。

 

開発途上国の社会保障分野の援助は今、貧困層をターゲットとして毎月定額送金する、いわば生活保護制度が全盛期にあります。

誰が推し進めているのか?

世界銀行です。世界中でプロジェクトを展開していて、途上国政府への低利貸付で賄っています。

社命が、「2030年までに貧困を撲滅すること」ですから、貧困世帯の銀行口座へ定額給付を続ければ、当然のごとく貧困世帯は貧困でなくなるわけです。

 

一見すると良いことのように見えますが、実は良いことばかりではありません。

この論文が問題提起するのは、まさにこの、貧困層にターゲットを絞って社会保障給付をすることが、いかに非効率的で効果がないかということです。

なぜか?

理論上は先ほどお話ししたように、「貧困世帯へ現金を配れば貧困はゼロになる」のですが、実際にはそんなことは起こっていません。

貧困世帯を見つけ出し、ターゲットを絞って送金するための行政コストが莫大であって、それにもかかわらず、本当に貧しい人には届いていない。

そういう事実が、最近明らかになってきています。

世界銀行で貧困削減を後押ししてきた著名な人たちさえ、最近は否定的になってきています。

Brown et al.  2016. A Poor Means Test? Econometric Targeting in Africa.

まあ、そんな感じの論文です。

 

今日の記事は、面白くなかったですね。