国連に日本人職員が必要な2つの理由

日本の国連関連機関に対する拠出金の割合に対して、日本人職員の数が相対的に少ない問題がある。外務省が作成した以下の表を見てください。

これは、国連事務局に限定した数値ですが、どの国際機関でもこうした傾向は往々にしてあると思います。つまり、日本がトップドナー(一番お金を払っている)にもかかわらず、職員数が圧倒的に少ない。こうした現状があるということです。

国連事務局における「望ましい職員数」及び職員数

順位 国名 職員数(注) 女性職員数
(内数)
女性職員割合 望ましい職員数
下限~(中位点)~上限
1 米国 366 199 54.4% 373~(439)~504
2 英国 151 60 39.7% 92~(109)~125
3 フランス 146 71 48.6% 99~(117)~134
4 イタリア 133 65 48.9% 80~(94)~108
5 ドイツ 132 73 55.3% 125~(147)~169
6 カナダ 89 39 43.8% 56~(66)~75
7 日本 81 51 63.0% 186~(219)~252
8 中国 77 38 49.4% 119~(140)~161
9 スペイン 69 29 42.0% 56~(66)~75
10 メキシコ 62 26 41.9% 39~(46)~53
その他 1,696 709 41.8%
合計 3,001 1,360 45.3%

出典:外務省

 

なぜ、国連の日本人職員が少ないと問題なのか?

なぜ問題か?これは私個人の考えですが、①影響力、②心理的側面。この2つの問題があると思います。

影響力

まず、影響力に関して言えば、「お金だけ出して、人を出さない、口出さない」。ボランティアで募金しているのであればとても良い姿勢でしょう。ただ、各国のエゴの渦巻く国際政治の舞台では人を出さなければ何事もなかなか意向通りいきません。

もちろん、国連職員は「中立の立場」で仕事をすることが求められ、働いている本人たちも、援助対象国の人々のために一生懸命仕事をしています。ただ、職員の存在は「各国のコネ」につながります。小さいところでいえば、インターンの受け入れ、コンサルタントの雇用など、同じ国籍の人の方が知り合いも多く、声がけをしやすいのでしょう。結果的に、同じ国籍で固まって仕事をしている人をたくさん見ます。

また、同じ国籍の場合、否が応でも普段から付き合いが多くなります。日本人会、大使館主催のイベント、日本人祭り、日本人間での友達の紹介、日本人学校など。これは日本人に限ったことではなく、他の国籍の人もそうだと思います。付き合いが多くなれば、何かの会議へ招待してみたり、仕事の情報交換でコーヒーに誘ったり、いろいろなつながりができてきます。

個人間のつながりが仕事を動かしていくのが国連ですから(※)、職員数が少なければ、それだけ仕事上の配慮や付き合いが日本と薄くなるということだと思います。これが大きな問題です。

 

※逆に組織として仕事ができないのが国連の欠点だと思っていますが、この点はまた次回。

 

心理的側面

二つ目の問題は、心理的なものです。簡単に言うと、「日本国民の税金で、フランス人、イタリア人、イギリス人、中国人の給与を払いたくないでしょう」というもの。これはあまり日本国内では節税している一方、「日本の公務員の何倍もの給与を他国の国際公務員に支払う」、というのはおそらく日本国民としてはあまり心地よいものではないでしょう。

あまり論点にならないポイントですが、長期的に日本が国連を支援していくためには必要な考え方だと思います。