国連パスポートや公用旅券はかっこいいのか?
国際協力を志す方からよく言われることがあります。
国連パスポート(通称:レセパセ)はかっこいい
今回は、レセパセ(UNLPとも呼ばれる)はかっこいいのかを検証していきたいと思います。私はパスポートコレクターではありませんが、写真のとおり色々なパスポートを持っています。外交官だけが持てる外交旅券と5年物の一般旅券が揃えばコンプリートです。
それでは本題です。たしかにレセパセは、誰でも持てるものではなく、レア度は高いと思います。しかし、これを日本人が持つと、相当な不便を伴うことになります。
日本の一般旅券は世界のパスポートランキングで最上級クラスですから、日本人である限り、これより便利なパスポートを手にすることはできません。
国連職員は業務渡航の際には必ずレセパセで渡航しなければなりません。たとえば、タイへ出張に行くことを想定しましょうか。
日本の一般旅券(赤いパスポート)であれば、VISAは不要です。これがレセパセになると、VISAを取得する必要があります。百歩譲って業務出張なので仕方ありません。
しかし、VISAを取得するためにはイエローカードが必要となります(※)。
つまり、一般旅券で渡航すれば黄熱病の予防接種が不要ですが、レセパセを所持していることを理由に予防接種を受けねばならないというわけです。
何とも理不尽ですね。恐らく、「国連職員は一般人に比べて感染症リスクの高い国に渡航している」という仮定のもと、VISAの取得基準が厳しくなっているのだと思われます。
※イエローカードとは、黄熱病の予防接種を受けたことを証明する国際的に有効な証明書です。アフリカ諸国へ渡航する場合には入管時に提示を求められますが、日本やスイスからタイへ一般旅券で渡航する際は不要です。詳細はこちら。
公用旅券は便利?
ついでに、日本の公用旅券の話もしましょうか。
公務で海外渡航・駐在する場合は、公用旅券を携帯することになります。一般旅券との二重携帯はできませんから、公用旅券だけ持参することになります。
まず、公用旅券の場合、公務に応じて渡航できる国の制限がある場合があります(青年海外協力隊などは、今でも任国周辺だけ?)。
私は渡航制限のない公用旅券を所持していましたが、それでも不便でしたね。基本的に、私生活も全て含めて公務で任国に滞在しているという整理ですから、プライベートでの旅行も全て会社へ事前申請です。知られたくないプライベートもあると思いますが、事前申請です。そして、会社の渡航基準に沿って、プライベート旅行に行っても良い国とダメな国が決められています。
公用旅券は一般旅券と異なり、VISAが必要とされることも多いです。たとえば、アメリカに駐在していて第三国へプライベートで旅行へいく場合も、VISAが必要な場合があります。外務省のリストを見るとたとえば、公用旅券で中国へ渡航する場合はVISAが必要で、一般旅券で渡航する場合はVISAは不要という整理のようです。
レセパセと公用旅券はかっこいいが不便
このように、レセパセや公用旅券はレア度が高いと言う意味では、パスポートコレクターにとって「かっこいい」でしょうが、使う側としては「できれば赤いパスポートで渡航させてください」というのが本音です。
追記 1
国連の組織間で、レセパセの運用方法については違いがあるようです。
追記 2
大学時代に世代が近かった瀬谷さんの本を読んで、レセパセの存在を知りました。当時の本がどれだか覚えていないのですが、タイトルはこれに似ていたような気がします。世界中の色々なパスポートを使いながら、平和構築の仕事をしていた瀬谷さんに憧れたものです。