インドネシアの国連職員の一日
ジャカルタの朝7時45分、普段より遅めのスタートとなった1日が始まった。南ジャカルタにある社会保障実施機関との9時からの打ち合わせに向け、近くのスターバックスで時間を潰すことにした。ジャカルタの悪名高い渋滞を考慮し、早めに現地入りするのが常套手段だ。
1時間ほどの時間を活用し、来月予定している労働者・労働団体との会合の準備に取り掛かる。雇用保険や年金改革に関する労働組合の見解をヒアリングし、ディスカッションを行う予定だ。その招待状作成とプログラム立案に時間を費やす。
9時、社会保険実施機関であるBPJS雇用に向かう。労働災害保険に関するアジア地域会合の主催について、専門家のリストアップや予算の相談を行う予定だった。
しかし、到着してみると先方が完全に忘れていたという事態に。インドネシアではよくあることだが、一喜一憂せず淡々と対応するのが肝要だ。1時間ほど待合室で別の作業をこなし、WhatsAppで急遽別の打ち合わせが入る。タクシーで15分ほどの距離を移動する。
このようなドタバタは日常茶飯事で、ジャカルタに実際に居なければ対応できない仕事が多いのが実情だ。社会保険実施機関との1対1の打ち合わせは、WhatsAppでのメッセージを受けての急な相談だった。進捗しない案件のトラブルシューティングが主な内容である。
国際労働機関と社会保障実施機関との間で覚書を結び、研修や技術支援を行う仕組みの構築について話し合った。また、10月に予定されているインドネシアの新政権発足に向け、社会保障改革の将来のリーダーに知識を提供する機会の設定についても議論した。
インドネシアでは個人的なつながりで仕事が進むことが多いため、このような急な連絡にも対応できるよう準備しておくことが重要だ。2時間ほどのカジュアルな意見交換を終え、昼食を済ませてオフィスに向かう。
オフィスはジャカルタ中心部の有名なスポット、サリナデパート近くにある。このデパートは日本の戦後賠償で建設された歴史的建造物で、かつては物価統制の役割も担っていた。現在は高級品も取り扱う観光スポットとなっている。
オフィスは個室で、広々としたオープンスペースで仕事を行う日本の官僚機構から見れば贅沢の極みだ。通常、朝7時から夕方6時頃まで勤務するが、通勤時間を合わせると在宅勤務時に比べ2時間ほど長くなる傾向にある。
インドネシアの官僚機構はまだ成熟途上にあり、同じ部署内でも情報共有が不十分なことがある。そのため、同じ案件でも複数のスタッフと個別に調整する必要がある。これは長年かけて形成された組織文化であり、急激な変化は望めない。粘り強くフォローアップを続けることが肝要だ。
人員が限られているため、局長レベルから事務スタッフまで全ての連絡が一人に集中する。個人情報の扱いも日本とは大きく異なり、連絡先の共有が日常的に行われる。これには利点もあり、多くの人と個人レベルでコネクションを持つことができる。
顔と名前を覚えるのが苦手な自分は、写真を撮って連絡先に登録するなどの工夫をしている。今日のように4人の異なるスタッフから同じ案件で連絡が来ることもあり、そのような状況にも柔軟に対応する必要がある。先方は内部調整をすることが苦手で、横の情報共有も立ての情報共有もないものとして考えた方がよい。
このような調整に終始する1日もあれば、机に向かってレポートを書く日もある。どちらも重要な仕事の一環であり、柔軟に対応する能力が求められる。インドネシアの社会保障改革に携わる国連職員の日々は、このように多岐にわたる業務と予期せぬ事態への対応の連続なのである。
※この記事は、AIが筆者の音声ファイルを文字起こし・執筆し、筆者が編集したものです。