新しい働き方が生まれ、転職という概念がなくなるとき

未来の仕事というテーマでILOは調査研究を実施し、100周年の記念事業としています。実務レベルでは、これをどのように実現していくかが課題となってきます。調査報告書や宣言文を読んでいただければわかるのですが、AIなど新しい技術に既存の仕事が奪われるというリスクはある一方、新しい仕事や機会が生まれる時代となるということが書いてあります。これは何時の時代も同じことで、産業革命やコンピューターの登場によって仕事の仕方が大きく変わりました。これからの仕事の在り方はより複雑に、より自由度を増したものとなるでしょう。

この絵は仕事の一場面でノートを書いている途中、Surfaceで考えを纏めていたときに書いたものです。これまでの働き方というのは、一人の使用者の下で働き、「転職」することによって別の使用者の下で働くというキャリアがスタンダードでした。

仕事の未来はどうでしょう。日本でも働き方改革の一環で副業を認める流れになっていたり、デジタル経済が進む東南アジア諸国ではプラットフォームワーカーやオンデマンドワーカーのように従来の雇用関係では定義できない働き方が登場したり、複数の使用者の下で同時に働くことも一般的な流れとなる気配すらあります。転職という概念もなくなる時代も来るかもしれません。

色々な可能性が仕事の未来にはあると思うので、これはあくまで一つの見方です。ベトナムやインドネシアで議論されている労働・社会保障改革の中心はまさにこれで、新しい働き方を従来の保護制度でどのように対応していくことができるか。対応させるためにはどのような改革が必要か。

これらは先進国も経験していないことで、東南アジア諸国のカウンターパートからは、自分たちが先進事例となるという気概すら感じます。経済がアセアン域内で自由に動くようになり、各国の制度設計や好事例の共有なども、かなりのスピード感を以て行われています。たとえば、ILOが実施するワークショップでA国の官僚がB国の事例を見て気になったら、来月視察に自腹で行くというスピード感と熱意で、物事が動いています。

こうした働き方や社会制度の変化というのは、アセアン諸国はより早く先進的な事例となっていくのだと感じます。