7割の完成度でも時間通りに進める、これはある種のスキル

働き方が多様化する中で、本業と副業が認められつつある。いずれは副業が格上げされて、本業を複数もつ働き方が一般的となるのではないだろうか。そこで個人は複数の能力を求められるようになる。専門家にも経営能力が求められ、経営者にも専門性がより求められる。

国連の中でも専門機関に属する私は、面白い経験をさせてもらっている。人事、総務、調達、広報、資金集め。これらのタスクを総動員してやっている事業は雇用保険制度の導入支援であり年金制度改革支援。片手間では出来ない難解な分析、議論。一人十役やらないといけない。

これらをこなすには、社会保障政策の専門性だけではだめで、年金数理の知識、業務指示書を書く力、的確に組織を動かす指導力、広報資料作成のフォトショップなどツールを使うスキル… 資金力のある大手国際機関では社内の分業体制や内部制度がかなり整っていて、間接部門へ労力を割かずともよいらしい。組織力が弱い会社に属していると、組織としては改善点が多いものの、マルチタスクをこなす自力は鍛えられる。いずれにせよ、専門家は一人ではイチの結果しか出せないので、イチの力でチームを動かして百の結果を出せる人が必要とされる。

とはいえ、どれだけ時間があっても全て完璧にはこなせないので、7割程度の完成度でも時間は守って進める。3割諦めてでも時間を守るのは、私はある種の「スキル」だと考えていて、研究者、専門家はこのスキルを持ち合わせず、時間より残り3割の完成度を求めてしまう傾向にある。

資金提供者や顧客が時間と完成度のどちらを高く評価しているのかを把握し、完成度を諦めるスキルも大切。予算が無限にあれば良いが、相手がある仕事の場合、時間通りに回すのが求められることも多い。専門家が多い組織にあって、自戒の念を込めて。