感染症で再度出張キャンセル、病欠の多いインドネシアにおける体調管理の難しさ

昨年11月下旬に、「コロナ感染のために一週間の出張予定をキャンセルして仕事に穴をあけた」話を書いた。その二か月後の1月中旬にも、酷い咳・痰・鼻詰まり・臭覚異常で一週間以上体調不良だった。そこからまた二カ月。本来であれば、今日の夕方出発のジュネーブ出張をキャンセル。本部と現場でほとんどやり取りのないILOの社会保障専門家を世界中から集めて、二年に一度くらいの頻度で情報共有会を一週間行う。その出張をキャンセルしなければならなかった。これで二回連続の海外出張の直前キャンセル。インドネシアに赴任してから海外出張のキャンセル率は現時点で100%。体調管理には人一倍気を付けているものの、回避できないことに、この国で仕事をすることの難しさを感じ始めている。

結果から言うと、A型インフルエンザ陽性。コロナは陰性。

3月14日火曜日の夕方に、気管支からくるおかしな咳が度々出るようになった。ただ、病気を疑うような症状ではなく、エアコンやハウスダストの類だと決め込んでいた。その日は、自宅勤務で午後15時頃まで仕事した後、隣にあるジムで一時間汗を流し、近くのカフェで数時間仕事して帰宅。

3月15日水曜日、自宅での抗原検査は陰性。咳の症状が酷くなっていたことと、鼻の奥に感じる微かな違和感のため、かかりつけの診療所へ。土曜日の出張までに治癒したいことを伝え、点滴と咳止めなどを貰う。細菌性の感染症を飛沫感染したとの診断。昼食を近くで済ませた後、スターバックスでオンライン会議に出席し、カフェをはしごして夕方まで仕事。

3月16日木曜日、自宅勤務。若干のダルさを感じたので、物書きの仕事はやめて、調整系の頭を使わなくてよい仕事にシフト。出張時に会いたい人との面談調整など。夕方になると座り続けていることが難しくなり、寝たり起きたりしながら机に向かうようになる。景気づけのために、普段よりボリュームのある中華を出前注文し、完食。食欲はあるものの、ダルさが抜けず、19時就寝。

3月17日金曜日、夜中に頭痛と体の熱さで目が覚める。「これは、出張キャンセルだな。キャンセル料の払い戻し規定は何だっけ。」などと考えながら、うとうとと、7時頃まで何とか眠る。起床後は、38度5分。食欲も無く、胸やけと若干の吐き気もあったので、点滴で栄養補給してもらいに診療所へ。タクシーを待っている間に、出張キャンセルの連絡と航空券の払い戻しの連絡を入れる。土曜日の夜9時過ぎのトルコ航空で出発予定で、24時間以内のキャンセルが払い戻し条件だった。診断結果は、インフルエンザ陽性で、午前中に栄養剤、ビタミン剤、解熱剤の3パックを2時間かけて点滴し、元気になって昼食を平らげ、帰宅。

土曜日の正午にこの記事を書いているが、今の体調であれば、問題なく今夜の出発はできそうな具合だ。しかし、やはりキャンセルして正解だったと思う。ウイルスをまき散らしながら会議に参加するのも忍びないし、体力的にしんどい中で出席してもあまり良いことはない。万全の状態で常に仕事と向き合いたい。

冒頭の、「この国で仕事をすることの難しさ」についても触れたい。私の日常生活は「仙人のような暮らし」と知人に言われるほどつまらない。在宅勤務が続いていたコロナ渦では、2週間以上、一歩も外へ出ず、出前注文で自宅にいたが、精神的に何でもなかった。昨年末から、事務所の方針として出勤の義務化が始まり、1月からは週3回の義務化となった。

A型インフルエンザの場合、潜伏期間は感染から1-3日間。私の感染日を14日火曜日とすれば、土曜日から月曜日に感染したことになる。土曜日は早朝からカフェを二軒でパソコン仕事をし、屋台で昼食をとって、午後は在宅。日曜日は運動の日で、10キロの散歩。いずれも、カフェや食事処に立ち寄ったのみで、ガラガラの店内で一人でいることが多く、人混みには入らなかった。月曜日は出勤が義務化されている日で、終日会社勤務。特段打合せは無い物の、同僚は誰もマスクをしていないのと、ビルの空調が空気循環させているシステムなので、換気は微妙。

自分の行動履歴を振り返ってみても、確定的なことは言えないのだが、一番リスクが高いのは出社した際で、それ以外の私の生活では幸か不幸か人と会話する距離に入ることはない。そうなると、やはり出勤日にもっと気を付けなければいけないのか。そういった反省点にたどり着く。ただ、自己管理は自分だけでやっていてもダメで、周囲に自己管理が甘い人が多ければ多いほど、巻き添えとなる場合もある。そこが、この国で自己管理をしながら働くことの難しさと感じる。

民間企業の駐在員の記事で、「インドネシア人は病欠の頻度が高い」という話を見て、たしかに同僚にも毎年病欠をすべて取り切る人がいることや、頻繁に病気になるスタッフがいることを思い出す。今回も例外ではなく、同僚の多くが病欠だという噂を耳にした後に、私も病気にかかる。職場では同僚の多くは昼食を狭い会議室にすし酢目になりながら、1時間半ほどワイワイやっていて、それ以外の時間も煙草に出かけたり、お祈りに出かけたり、一日の内に何度も集団で群れている場面を目にする。インドネシア人に聞けば、インドネシアではみんなでワイワイ話すのが文化なのだとか。感染症を回避して、仕事に影響が出ないようにすると考えるのであれば、「集団で集まってワイワイやるなんてもってのほかだ」ということになるのだろうが、ここではこれが当たり前なのだから外国人がとやかく言うこともできない。ちなみに、前回のコロナ陽性の時も、二週間で外出した唯一の機会で、それが仕事の会議でだった。

文化の中に外部からやってきた私としては文句を言う労力を使うわけもなく、病気を貰わないように気を付けることしかできない。ただ、仕事しかしていない生活の中で、これだけの頻度で感染症を貰うというのは辛い。数年に一度しか体調不良になったことがない生活をしている私としては、インドネシアで働くことで二カ月に一回感染症に掛かるのは大ごとなわけで、体力的にも仕事的にも厳しいところまできている。ワシントンDC、ジュネーブ、バンコク駐在時も、ほとんど大きな病気をした記憶がないし、病欠をとった記憶は仕事を始めてから二回しか記憶にない。

これがもう何度か続けば、インドネシアでの仕事を辞めることも考えなければならないと考えるほどである。