同僚の旅立ち

同世代の同僚が退職する。2週間後に迫った契約満了後どうするのか。兼ねてから気になっていた。悩んだ末に、結局退職することにしたようだ。

その同僚は2015年7月から2年契約を締結し、2017年6月で一旦契約満了となった。その後、時短勤務(週3日)での1年契約をオファーされたものの固辞。3か月契約でフルタイム勤務とすることで契約合意に至っていた。

以前にも書いたが、EU圏外出身の職員はフルタイム勤務でなければ労働許可証が取りにくい。しかも、時短勤務となれば実質的に給与50%カットとなる。職員の給与事情については別の記事を参照いただきたいが、50%カットの給与水準ではジュネーブで生きていくことはできない。そのため、彼女は3か月契約を選択するほかなかった。

そして、3か月契約が満了を迎える。数か月ごとの先の見えない契約で繋ぐにはリスクが伴う。特にジュネーブの高い物価水準(東京の3倍)では、収入が無ければすぐに貯金は底をつく。

彼女はジュネーブを去ることを決めた

様々な契約体系で足掛け5年の経験がある彼女。現在のポストでも重要な仕事を任されていて、その後引き継いで同じレベルの仕事をこなせる人はいない。おそらく、抜けた穴は簡単に埋めることができず、仕事は放置されるか、数か月~数年単位で遅れていくのだろう。

仕事ぶりからすれば、彼女が抜ける穴は極めて大きい。それでもジュネーブを去らなければならない理由があった。契約条件だけではない。今後のキャリアの見通しも大切な要素である。ジュネーブでこのまま仕事を続けていて意味があるか。その次のステップはどうするか。様々なことを考えながら、5年在籍したチームを去る。

移籍先の契約も3か月だけ。クリスマス・正月前に契約は切れる。しかも、福利厚生は一切ないコンサルタント契約(個人事業主)。年末にはまた契約交渉と職探しが待っている。それでも今、ジュネーブを去った方がキャリアにとってプラス。その判断に至った理由は、本人しか知らない。

私たちは皆、こういう状況に置かれている。数か月先の人生すら見えない。これを多くの日本人は悲観的な目で見るだろう。しかし、この状況を楽しむことができなければ、私たちの明日はない。

送迎会はしないけれど

私のオフィスでは、数週間、数か月単位で出会いと別れが交互に訪れる。これまでのキャリアや、これからのキャリアについて深く詮索することはない。まして、プライベートに深入りすることも無い。職場の付き合いだけである。

毎朝、Good Morningで笑顔を交わし、夕方、Have a Good Eveningで別れる。それを繰り返しているうちに旅立ちの日を迎える。

日本の会社のように、歓迎会も無ければ送迎会も無い。自己紹介の機会も無ければ、別れの挨拶も無い。そんなことも日常茶飯事だ。日本の組織に慣れている人からすれば、これを「ドライな職場」と見るかもしれない。

正直、それが何故なのかわからない。ただ一つ言えることは、出会いと別れがあまりに多いということ。そして、ここにいる誰もが、先行きの見えない人生を数か月単位で歩んでいること。だからこそ、お互いの過去や未来、プライベートや本心に深入りしない。そういうことなのかもしれない。

私たちは日々繰り返される出会いと別れの連続に感情移入しないよう、淡々と心の中でお互いの成功を祈っている。

送迎会もしないだろう。

ただ一言。いつものように最後に言って別れるだろう。

Have a Good Evening.

旅立ちの日に